採択された計画に共通しているのは、「何を買うか」から始めていないことです。どの計画も「自社の数字のどこが弱いか」から始まり、その課題を解くための投資にたどり着いています。
ここでは、窓口や申請支援で実際にあった流れを、業種と分析手法を取り出して紹介します。私は、自分の業種に近い事例を1本読むことが、様式2を書き始める最も早い方法であると考えています。
※ 事業者が特定される情報(事業者名・所在地・施設名等)は記載していません。指標との差や統計の数値は、申請時点の実物のとおりです。
15の事例を一覧で見る
各事例は「指標で見つけた課題 → 統計で裏づけた → 買ったもの・なぜそれか → 目標数値」の順で書いています。業種名を押すと、詳細の記事に進みます。
| 業種 | 指標で見つけた課題 | 使った統計 | 買ったもの | 目標数値 |
|---|---|---|---|---|
| キッチンカー(クレープ) | 人件費比率が同業より13.1%低い | 家計調査「喫茶代」 | 車両の改装・焼き台・冷蔵設備 | 売上2,000万円 |
| オートバイ整備(旧車) | 1人当たり売上が3,624千円低い | 二輪保有台数・ローカルベンチマーク | ウェットブラストマシン | 1人当たり16,000千円 |
| ペンション(サーフィン客) | 粗利率3.2pt低下・外国人比率2% | 家計調査宿泊料・レジャー白書 | 共用浴室のシャワールーム化 | 外国人比率20% |
| 日本料理店(16席) | 粗利率42.2%(指標66.5%) | 家計調査「和食」・jSTAT MAP | 冷蔵庫・外装改修 | 原価率50%未満 |
| れんこん農家(6次化) | 雇用の余力が無い | 直売所調査・卸売価格の季節差2.5倍 | 農産物低温貯蔵庫 | 売上1,200万円 |
| トレーニングジム | 人件費比率28.3%・売上が3割減 | 家計調査・RESAS生産年齢人口 | 空調・トイレ・看板 | 会員100名 |
| 化粧品製造卸 | 国内市場への依存(粗利64.9%) | 市場調査・EC市場調査 | 温水器・越境ECサイト・印字機・カメラ | 導入600店 |
| ゲストハウス(創業型) | 客単価5,000円で頭打ち | 家計調査宿泊料・観光統計 | 浄化槽拡張・薪ストーブ | 客単価7,000円 |
| 自動車整備(3代目) | 外注比率が高く粗利率が低い | 家計調査整備費・商圏の高齢化率41.8% | 大口径タイヤ対応機器 | 売上2.5〜3億円 |
| 和菓子店(承継) | 粗利率・1人当たり売上が低い | 家計調査「他の生和菓子」・高齢化率49.4% | コールドテーブル・看板 | 年商8,500千円 |
| 寿司店(34席) | 人件費比率が低い・客数不足 | jSTAT MAP・家計調査「すし」「飲酒」 | 手すり・座敷椅子・空調・オーブン | 売上2,000万円 |
| 葬祭業 | 粗利率37.7%(指標67.5%) | 家計調査葬祭費・RESAS死亡数 | 遺体保冷庫・大型ポスター印刷機 | 粗利率47.7% |
| 米穀・肥料販売 | 収益性(ローカルベンチマークA評価) | RESAS産業構造・肥料価格3倍 | 保管倉庫・パンフレット | 粗利1億2,000万円 |
| そば店 | 店頭売上の減少 | 家計調査「外食」と「乾めん」 | 製麺関連機器3点 | ― |
| 印刷関連サービス | 人件費比率が低い=設備不足 | 経営指標 | 封入機 | ― |
業種別に見る、課題の見つけ方
飲食店は「原価率」から入ります
日本料理店は、小企業の経営指標との比較で売上総利益率が23ポイント低いことを見つけ、課題を「高い原価率」の1点に絞りました。寿司店は逆に粗利率が高く、人件費比率の低さから「客数」を課題にしています。私は、飲食店の様式2で最も書きやすい課題は、粗利率か客数のどちらかであると考えています。
整備業は「外注に出している工程」から入ります
自動車整備業は、大口径タイヤの交換を外注していたことが粗利率を下げ、粗利率の低さが人件費比率を下げる、という因果を1本の線で書いています。オートバイ整備業は、粗利率は高いが1人当たり売上が3,624千円低いという指標から、時間のかかる工程を機械化する判断をしています。
※ 自動車関連で対象になりやすいのは、車検関連の機械・センサー系・タイヤチェンジャー等の整備機械です。車両本体は対象外となっています。
宿泊業は「客単価」と「外国人比率」から入ります
ペンションは「国内は頭打ち、海外は伸びている、自社は2%」という3つの数字を並べ、共用浴室のシャワールーム化にたどり着きました。開業6か月のゲストハウスは、決算書の代わりに予約サイトの評価点と月ごとの売上推移を指標にしています。創業直後でも、数字は作ることができます。
製造小売・農業は「価格の季節差」と「商圏の高齢化」から入ります
れんこん農家は、卸売価格が11月と6月で2.5倍動くことを根拠に、低温貯蔵庫で通年供給に切り替えました。和菓子店は、商圏の高齢化率49.4%という数字から、商圏外の観光客を狙う新商品を選んでいます。いずれも「なんとなく」ではなく、統計の数字を見てから方向を決めています。
共通しているのは、この順序です
① 決算書を同業平均と比べる
↓
② 弱い指標=経営課題を特定する
↓
③ 商圏と市場の統計で、外部環境の裏を取る
↓
④ 課題を解く打ち手を決める
↓
⑤ その打ち手に必要な設備・経費を積む
「これを買いたい」から始めると、④と⑤しかない計画書になります。私は、それでは審査で①②③の観点に点が付かないと考えています。15の事例は、業種は違ってもすべてこの順序で書かれています。
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ご注意(免責事項)
掲載している事例は、分析の考え方をお伝えするために業種と手法を抽出したものです。個別の事業者が特定される情報は含みません。また、同様の計画が採択を保証するものではありません。個別のご相談は、お近くの商工会・商工会議所の窓口をご利用ください。
