郊外の大型商業施設の敷地を中心に出店している、キッチンカーのクレープ販売事業者の事例です。開業から4年目、従業員1名の個人事業者が、持続化補助金で「車両の大型化に伴う改装工事」と「調理器具」を導入いたしました。
指標で見つけた課題
日本政策金融公庫「小企業の経営指標」の「喫茶店」と比較したところ、売上総利益率は同業他社と同程度であるものの、人件費対売上高比率が同業他社より13.1%低いことがわかりました。
キッチンカーは固定店舗の家賃がかからない一方で、出店手数料と燃料費がかかるため、諸経費比率が高くなる業態となっています。
収益性に問題が無い以上、人件費に回せる余力を作るには「販売数量」を増やし、固定的な諸経費の比率を相対的に下げる必要があると整理いたしました。
統計で裏づけた
総務省統計局「家計調査」の「喫茶代」は、2014年の5,587円から2019年の7,327円へと拡大したのち、2020年に5,089円へ急減しています。
申請時点では、各種イベントの再開により2019年の水準まで回復すると見込み、需要の拡大に対応できる生産性が必要であると判断いたしました。
また、競合となるキッチンカーは軽車両から2〜4トンのトラックベースへと大型化が進んでおり、視認性と販促物の掲示面積で差がついている状況でした。
買ったもの・なぜそれか
中古の大型車両そのものは自己資金で取得し、補助事業では「水回り・電気配線の改装工事」「外装塗装」「焼き台の複数化」「コールドテーブル・冷凍庫」を対象としました。
車両本体は補助対象外であるため、対象になる架装部分と調理器具に絞った構成となっています。
焼き台を複数稼働させることで、お客さまが集中する時間帯の回転率を上げ、フライ商品の追加で客単価の向上も見込む計画です。
目標数値と3年計画
経営目標は「売上高2,000万円台」であり、3年後の達成を計画しています。
効果は①視認性向上による新規顧客の開拓 ②車内生産性の向上による客数増 ③商品ラインナップ増による客単価向上の3点に整理されています。
申請書ではこう書きました
以下は、実際に提出した様式2からの抜粋です。事業者名・地名・取引先名・商品の固有名は伏せ、売上の実額は概数にしています。比率と公的統計の数値は原文のままです。
売上総利益率(粗利益率)については、同業他社と同程度であるものの、人件費対売上高比率が同業他社と比較して13.1%低いことがわかりました。充分な人件費を確保できていない経営状況となっています。その理由としては、諸経費対売上高比率が高い点にあると見込んでいます。当事業所は「キッチンカー」による運営となっており、固定店舗における「家賃」相当額はかからないものの、出店に際しては出店手数料がかかり、また移動については燃料費がかかるなど、「諸経費」については固定店舗よりも多額にかかる業態となっています。
様式2 1. 企業概要
現状の軽車両ベースのキッチンカーでは、顧客に対する視認性が悪いだけでなく、1名のみでの従事となることから顧客集中時の回転率が悪くなっております。車両の大型化を図ることにより、大幅な売上向上を実現したいと考えています。
本事業では、既存の大型中古キッチンカー車両を導入(自己資金で対応)し、クレープ販売用キッチンカーとして運営できる体制を整えます。事業の流れとしては以下を想定しています。1.中古キッチンカー車両の購入(補助事業外) 2.車両の水回り工事および電気配線工事の実施(本事業) 3.店舗外装の塗装工事(本事業)
様式2 補助事業計画 2. 販路開拓等の取組内容
私は、この抜粋で最も参考になるのは「1.車両の購入(補助事業外)」と番号を振って明記している点であると考えています。車両本体が補助対象外であることを、申請書の中で自ら区分して見せることで、審査員に疑義を残しません。対象外のものを黙って含めるより、外して書いた方が通ります。
同じ業種の方へ
私は、この事例の要点は「粗利率は同業並み、人件費比率だけが低い」という指標の読み方にあると考えています。
粗利に問題が無ければ、次に見るのは人件費比率と1人当たり売上です。ここで「数量が足りない」と気づけたことが、車両の大型化という施策につながりました。
また、キッチンカーは車両本体が対象外となります。架装と機器に絞る判断は「経費の判断」にまとめています。


コメント