【事例】寿司店|宴会需要が戻らない中で家族客を取る

寿司店|宴会需要が戻らない中で、家族客へ

このページは 業種別の活用事例 の一部です。

毎日中央卸売市場で仕入れ、カウンター10席と座敷24席で営業する寿司店の事例です。客単価は6,000円程度と高く、寿司以外の一品料理や甘味も揃えて女性客を増やしてきました。

目次

指標で見つけた課題

売上高は感染症拡大前の2,000万円台に戻っておらず、宴会や会食の1組あたり人数が大幅に減っていました。

「小企業の経営指標(寿司店)」との比較では、売上総利益率は同業他社を上回っていました。寿司以外のメニューに力を入れているため、鮮魚価格の高騰の影響が小さかったためです。一方で、人件費対売上高比率は同業他社を若干下回っており、人件費を確保するだけの売上が無い状態でした。

経営課題は「客数」であると整理し、店のコンセプトである「家族で来てもらい、楽しんでもらう店作り」に立ち戻る判断をしています。

指標との比較(寿司店) 粗利率は同業を上回る一方、人件費比率はわずかに下回る この事業者 小企業の経営指標 売上総利益率 62.5% 57.9% 人件費対売上高比率 32.9% 34.4% 粗利に問題が無いため、課題は「客数」に絞り込める 出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標」および申請時の決算数値
指標との比較。粗利率が同業を上回っているため、打ち手は客数に絞られた。

統計で裏づけた

「jSTAT MAP」で自動車5分圏を調査したところ、65歳以上が30%超、特に75歳以上の比率が高い一方で、45〜49歳の団塊ジュニア世代が増加していました。駅周辺の新しい分譲地への転入によるものです。

「家計調査」では、「すし」の支出は2023年時点で感染症拡大前の水準に回復していましたが、「飲酒」は2024年に入っても回復しておらず、宴会需要に依存しない運営が必要であると判断しています。

買ったもの・なぜそれか

導入したのは①座敷の段差への手すり ②座敷用のテーブルと椅子 ③間仕切りで分けた宴会場に対応する空調機器 ④過熱水蒸気オーブンレンジ、の4点です。

①〜③は、75歳以上の高齢者が長時間安心してくつろげる客室にするためのものです。大規模宴会ではなく家族単位の小宴会を複数同時に受注する形に変えるため、間仕切り後に不足する冷暖房能力を補う空調が必要でした。

④は、お食い初め・七五三等の家族行事に向けた子ども向けデザートやランチ宴会コース(4,000〜5,000円)を開発するためのものです。

目標数値と3年計画

経営目標は「感染症拡大前の売上高2,000万円台の回復」であり、計画3期目の達成を目指しています。

七五三需要を取り込むため、10月までに改修を終える計画としています。

申請書ではこう書きました

以下は、実際に提出した様式2からの抜粋です。事業者名・地名・取引先名・商品の固有名は伏せ、売上の実額は概数にしています。比率と公的統計の数値は原文のままです。

当店の経営状況は回復傾向にあるものの、依然として感染症拡大前の売上高水準には戻っていない状況です。(中略)令和5年、令和6年については、ある程度宴会等の受注も戻っております。しかし、宴会や会食に参加される人数が大幅に減少しており、お客様一組あたりの売上高が大幅に減少しております。

当店としては、多様な料理の提供や、それに伴う高い客単価に支えられている一方で、これまで得られていた「宴会客」が大幅に減少している状況です。従業員の雇用を支えるだけの、充分な「客数」を得られていない点が経営課題であると考えています。

様式2 1-2 現在の売上・利益の状況

当店近隣の人口構成比は高齢者が多い地域となっています。30%超が65歳以上の高齢者となっており、特に75歳以上の人口比率が高くなっています。元々居住している地域住民の高齢化が進んでいることが見て取れます。一方で、45〜49歳の団塊ジュニア世代が増加傾向にあります。

感染症の拡大時に減少した「すし」の売上については、2023年時点で既に感染症拡大前の水準にまで回復しています。(中略)一方で、売上のもう一つの柱である「飲酒」については、感染症拡大前の水準には回復していない状況です。2024年に入ってもその傾向は継続しております。

様式2 2. 顧客ニーズと市場の動向

近隣住民の高齢化が進んでおり、特に75歳以上の高齢者が当店の利用に困難を感じるケースが増加しています。特に不足しているのが、足腰が弱った高齢者向けの対応です。「親・子・祖父母・曽祖父母が四世代で集える店作り」を達成するためには、75歳以上の高齢者が安心して利用できる客室が必要となります。

様式2 補助事業計画 2-3 具体的な取り組み

私は、この事例の白眉は「すしは戻った、飲酒は戻らない」と2つの品目を分けて見た点にあると考えています。同じ家計調査でも、売上の柱ごとに品目を分けて確認したことで、「宴会需要には頼らない」という方針が数字から導かれました。手すり・座敷椅子・空調・オーブンという4点の機器も、すべて「四世代が集える店」という1つの目的に束ねられています。

同じ業種の方へ

私は、この事例で見ていただきたいのは、手すりや椅子といった小さな機器を「四世代が集える店」という1つの目的に束ねたことにあると考えています。

機器ごとに理由を書くのではなく、目的を先に置いて機器を並べると、補助事業計画に一本の線が通ります。

座敷椅子や空調を対象にする際の考え方は「経費の判断」にまとめています。

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この記事を書いた人

中小企業診断士・応用情報技術者。金融機関の窓口相談を9年間担当した後、商工会・商工会議所の窓口相談員として延べ500社以上に対応。小規模事業者持続化補助金の採択支援は延べ100社超。千葉県商工会連合会 エキスパートバンク登録専門家、千葉県信用保証協会等の各種支援機関登録専門家。

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