海岸まで徒歩3分に立地し、サーフショップ・スクール・飲食店を併設するペンションを運営する法人の事例です。SNSのフォロワーは7,000人を超え、広告宣伝費は年60万円程度と、低コストでの集客が実現できていました。
指標で見つけた課題
売上高は感染症拡大後に年率10%超で回復してきましたが、申請時点の直近期は微減となっていました。
また、売上総利益率は72.8%から69.6%へと3.2ポイント低下しており、仕入額の増加が収益を圧迫していました。
国内の観光客数は延べ74万人で横ばいとなっており、宿泊客に占める外国人比率は2%未満でした。全国の宿泊施設では外国人比率が30%を超えていることから、経営課題は「外国人観光客の誘致ができていない」点にあると整理いたしました。
統計で裏づけた
総務省統計局「家計調査」の宿泊料支出は、2025年7〜9月期に前年同期比で減少に転じており、客単価の大幅な向上は困難であると見込みました。
日本生産性本部「レジャー白書」では、サーフィン参加人口は2020年に40万人と推計され、長期的に減少傾向にあります。
一方で訪日外国人は2024年に3,687万人と過去最高を更新しています。顧客ニーズについては、訪日外国人が宿泊施設に求める設備のトップ3が「Wi-Fi」「浴室」「トイレ」であるという調査を引用し、海外向け予約サイトのクチコミに残された浴室への不満を生の声として示しました。
買ったもの・なぜそれか
男女別の共用浴室を、個室のシャワールームへ改修しました。
理由は①外国人観光客は共用のバスタブを敬遠する ②衛生面から浴槽の湯を頻繁に入れ替えており水道光熱費が増加している、の2点です。
稼働率は34.4%であり、簡易宿所としては高い水準ですが、稼働率の低い平日にインバウンド客を取り込む余地があると判断しています。
目標数値と3年計画
経営目標は「宿泊客に占める外国人比率20%超」であり、計画5年目の達成を目指しています。
宿泊部門の売上高を直近期比1,300万円台増加させる計画としています。
申請書ではこう書きました
以下は、実際に提出した様式2からの抜粋です。事業者名・地名・取引先名・商品の固有名は伏せ、売上の実額は概数にしています。比率と公的統計の数値は原文のままです。
当社の経営課題について検討いたしました。売上高は微減傾向となっています。これは、当社の立地している地域における観光客数が横ばいになっていることが影響していると見込まれます。(中略)令和5年以降は観光客数がのべ74万人で横ばいになっています。国内サーフィン人口は、日本全体の傾向と同様に高齢化が進んでおり今後大幅な観光客増加は見込めない状況となっています。
国内の観光客・サーフィン人口については増加が見込めないものの、国外からの観光客は大幅に増加しています。令和6年には3,687万人と過去最高を更新しており、また令和7年度についても10%以上の増加が見込まれている状況です。当社は(中略)インバウンド比率は2%未満であり、外国人観光客の誘致は実現できておりません。以上より、当社の経営課題は「外国人観光客の誘致ができていない」点にあると考えています。
様式2 経営課題
顧客のニーズを調査するため、住宅設備メーカーによる「訪日外国人の宿泊施設へのニーズ調査」を確認いたしました。同調査によると、訪日外国人が宿泊施設に求める施設のトップ3は、「Wi-Fi」「浴室」「トイレ」であることがわかりました。
当社ペンションの宿泊施設については、充分なインバウンド対応が進んでおりません。特に「浴室」については、従来式の共同浴室となっており、これが外国人観光客の誘致を妨げている状況です。特に感染症拡大以降は、浴槽のお湯を頻繁に入れ替える必要も生じていることから、水道光熱費の負担増加につながっています。
様式2 顧客ニーズ
当社の稼働率は34.4%となっており、「簡易宿所」としては高い水準ではあるものの、まだ向上の余地は大きい状況です。(中略)特に、インバウンド顧客は比較的稼働率の良い休日ではなく、稼働率の低い「平日」に入客することが可能となります。特に平日において「客数」を増やすことにより、売上高の向上を図りたいと考えています。
様式2 補助事業計画 2-2 背景・目的
私は、この抜粋が「国内は頭打ち・海外は伸びている・自社は2%」という3つの数字を並べた点で、市場の動向の書き方の見本になっていると考えています。また、稼働率34.4%を「簡易宿所としては高い」と評価したうえで平日に余地があると絞り込んでおり、打ち手が客数に一意に定まっています。
同じ業種の方へ
私は、この事例の強さは「国内は頭打ち、海外は伸びている、自社は2%」という3つの数字を並べたことにあると考えています。
経営課題が1行で伝わり、浴室改修という施策が自然に導かれます。
宿泊業の家計調査の見方は「自社分析の進め方」に、改修工事の費目は「経費の判断」にまとめています。


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