経営計画書を書き終えると、次は補助事業計画書です。様式2の後半にあたる部分で、「補助金を使って何をするのか」を書きます。補助事業計画書は、経営計画書の「今後のプラン」から一本の線でつながっている必要があると考えています。
ここでよく起きるのが、経営計画書と補助事業計画書が別の話になってしまうという失敗です。前半で「高齢のお客さまが増えている」と分析したのに、後半で若年層向けのSNS広告を計画する。これでは審査員は評価のしようがありません。
一方で、補助事業計画書には良い知らせもあります。書く内容が定型的なのです。ブロックが決まっており、それぞれに書くべきことも決まっています。この記事では、そのブロックごとの書き方を解説します。
この記事でわかること
- 補助事業計画書の4つのブロックと、書く分量の目安
- 30文字以内で付ける「補助事業計画名」の作り方(実例8つ)
- ブロックごとの「良い例」と「悪い例」
- 業務効率化の取組に何を書けばよいか
- 補助金で設備を入れても利益が増えない理由と、計画での確かめ方
- 書き終えたあとに確認すべき5点
補助事業計画書は4つのブロックでできています
まず全体像です。
上から順に、次の4つです。
- 補助事業で行う事業名 … 30文字以内
- 2. 販路開拓等の取組内容 … 2-1 事業の概要/2-2 背景・目的/2-3 具体的な取組
- 3. 業務効率化(生産性向上)の取組内容 … 3-1 背景・目的/3-2 具体的な取組
- 4. 補助事業の効果 … 4-1 取組の効果/4-2 効果の試算
分量の目安はA4で2〜3ページ程度です。経営計画書(3〜6ページ)よりは短くなります。
出発点は経営計画書の「4-2 今後のプラン」
補助事業計画書は、ゼロから考えるものではありません。経営計画書の「4-2 今後のプラン」に書いたことを、実行計画に落とし込んだものが補助事業計画書です。
ですから、書き始める前に前半を読み返してください。「今後のプラン」に書いていないことが、突然ここに出てきてはいけません。
補助事業は、経営目標を達成するための手段の1つという位置づけです。補助事業そのものが目標になっていると、「目標と事業内容が合致していない」と判断されます。
まず「補助事業計画名」を30文字で決める
意外に思われるところですが、ここがいちばん大事です。
審査員が最初に読むのが事業名です。1社あたりの審査時間は10〜15分程度と言われています。事業名で内容が伝わるかどうかで、その後の読まれ方が変わります。
30文字に収めるコツは、次の3つを詰め込むことです。
- ① 何を使って(=補助事業で導入するもの・手段)
- ② 誰に・何を(=ターゲットと提供するもの)
- ③ どうする(=販路開拓・拡大・強化)
実例8つ
実際の申請でつけた事業名です。いずれも30文字以内に収まっています。
- 地元勤労者の「憩いの場」を提供するための店舗拡張事業
- くつろぎの古民家で更にリラックスできる「ヘッドスパ」導入事業
- 玄米と米油を用いたグルテンフリー&健康志向餅おかきの販促事業
- 小規模エステサロン向けマーケティング支援による販路拡大事業
- 「大型看板」に対応することによる地元旭市の地域活性化事業
- 展示会出展による「高機能ワイパーブレード」の取引先拡大事業
- 名物「天然ブリの煮物」等の拡販と小規模宴会の受注強化
- 「うな重」調理体制強化によるテイクアウト・デリバリー拡大事業
共通しているのは、具体的な言葉が入っていることです。「販路開拓事業」「売上向上事業」のような一般名詞だけの事業名は、読んでも何をするのか分かりません。
カギカッコで固有の言葉を強調するのも有効です。「ヘッドスパ」「大型看板」「高機能ワイパーブレード」のように、その事業者にしかない言葉を入れてください。
2. 販路開拓等の取組内容 ── 具体性と整合性
補助事業計画書の中心です。ここは3つに分かれています。
- 2-1 事業の概要 … 何をするのかを短く
- 2-2 背景・目的 … なぜそれをするのか
- 2-3 具体的な取組 … 誰が・いつ・何を・いくらで
審査で見られる3点
| 観点 | 悪い例 | 良い例 |
|---|---|---|
| 計画の具体性 | スケジュールや費用の妥当性の記載がない | 誰が・いつ・どの経費を・何のために使うかが書かれている。実施項目の写真等の説明資料が載っている。スケジュールが書かれている |
| 目標との合致 | 目標と事業内容が合致していない | 販路開拓の手法(チラシの撒き方等)が経営計画書の内容に沿っている。提供する商品・サービスが経営計画書の内容に沿っている |
| IT利活用・創意工夫 | ITについての記載がない。創意工夫点が書かれていない | ホームページの活用等、簡単なITの利用についてでよいので記載がある |
その取組は、誰に何を売るためのものですか
補助事業の取組は、販路開拓に向いている必要があります。事業名と、取組の1文目で「誰に・何を・どう売るか」が言えているかをご確認ください。
採用難の解消、社内の管理、老朽化した機器の更新、感染症対策。いずれも大切な取組ですが、それだけを目的に書くと、制度の趣旨から外れてしまいます。
惜しい例:看護師の採用難を解消するため、採用向けのホームページを作成します。
直した例:医療機関から月3件ほど受け入れのご依頼をお断りしています。紹介元の医療機関とケアマネジャー向けに案内ページと資料を作り、新規のご紹介を年〇件獲得します。
※ 採否を伏せて読み直したところ、この項目では差が出ませんでした。制度の趣旨に沿って書くための作法としてお守りください(落ちる申請書に共通する4つのこと)。
「誰が・いつ・どの経費を・何のために」を書く
2-3 具体的な取組では、経費明細表(様式3)に書いた費目ごとに、対応する取組を書いてください。
たとえば「チラシ2,000部を制作し、商圏内にポスティングする」であれば、いつ制作し、いつ配り、誰が配るのかまで書きます。「広報活動を行う」だけでは具体性がないと判断されます。
写真を貼る
導入する機械の写真、改装前の店舗の写真、制作するチラシのイメージ。何に支出するのかが一目で分かる資料は、文章より強く働きます。
審査員はあなたの業界に詳しいとは限りません。専門用語で書かれた文章より、写真1枚の方が伝わります。
スケジュールを入れる
いつ発注し、いつ納品され、いつから稼働するのか。表で示してください。 補助事業には実施期限があり、期限内に終わらない計画は評価されません。
新たな価値を生む商品・提供方法は、どこに書きますか
第17回から、審査の観点に「新たな価値を生む商品・サービス・提供方法か」が加わりました。この観点にも、専用の欄はありません。
新メニューや新商品、持ち帰り・配送・海外発送といった新しい提供の仕方、自社の技術やノウハウを元にした商品。こうしたものが当てはまります。
取組の中に見出しを立て、何が新しいのかを1文で書いてください。強みの欄に書いたことから生まれる価値として書くと、前の欄とつながります。
3. 業務効率化(生産性向上)の取組内容
※ この欄は、17次までの様式2にあった任意の記入欄です。18次以降の入力項目型の様式には、この欄がありません。生産性向上の取組は、販路開拓等の取組内容の中に書きます。
ここは書き方に迷う方が多い項目です。販路開拓の取組と違い、「売上を増やす」のではなく「社内の手間を減らす」取組を書きます。
公募要領の参考資料には、次のような例が挙げられています。
サービス提供等プロセスの改善
- 従業員の作業導線の確保や、整理スペースの導入のための店舗改装
IT利活用の取組
- 新たに倉庫管理システムのソフトウェアを購入し、配送業務を効率化する
- 新たに労務管理システムのソフトウェアを購入し、人事・給与管理業務を効率化する
- 新たにPOSレジソフトウェアを購入し、売上管理業務を効率化する
- 新たに経理・会計ソフトウェアを購入し、決算業務を効率化する
まずはこの例に近いものが自社にないかを探してください。 該当するものがあれば、それを具体化して書けば十分です。
なお、この項目は必須ではありません。 ただし、書ける材料があるのに空欄にするのはもったいないところです。「IT利活用・創意工夫」の観点で評価される場所でもあります。
デジタル技術の活用は、どこに書けばよいのでしょうか
第17回以降の審査では、デジタル技術の有効活用が見られています。ところが様式2には、これを書く欄がありません。
そこで、販路開拓等の取組内容の中に1項目立てて書きます。予約や受注のWeb化、キャッシュレス決済の導入、顧客管理の仕組み、Googleビジネスプロフィールの整備といったものが当てはまります。
審査は、書いてあることに点を足していく方式です。欄が無い項目は、自分で小見出しを立てないと0点のままになります。取組の②や③として、1行でも触れておくことをお勧めしています。
4. 補助事業の効果 ── 数値計画は必須
最後のブロックです。ここを軽く扱う申請書が非常に多いのですが、「効果が明示されているか」は審査の観点そのものです。
| 観点 | 悪い例 | 良い例 |
|---|---|---|
| 売上の向上につながるか | 数値計画が記載されていない | 今後の売上計画が記載されている(収支計画まで書ければなお良い) |
| お客さまに与える効果 | 売上以外の効果が記載されていない | 集客の向上・認知度の向上・店舗イメージの向上等、お客さまに与える効果が具体的に書かれている(継続的な効果だとなお良い) |
4-1 取組の効果
実施計画それぞれについて、効果を1つずつ書いてください。 「チラシを配る→新規客が増える」「レジを入れ替える→締め作業が1日30分減る」というように、取組と効果を1対1で対応させます。
売上以外の効果も忘れずに書きます。集客、認知度、店舗イメージ、従業員の負担軽減。お客さまの側から見てどう変わるのかを書くと、審査員に伝わります。
4-2 効果の試算
数値計画の記載は必須です。
書き方の基本は、経営計画書で使った客数×客単価の分解をそのまま使うことです。
- 現状:客数◯人/月 × 客単価◯円 = 売上◯円
- 補助事業実施後:客数◯人/月 × 客単価◯円 = 売上◯円
そのうえで、なぜその数字になるのかを一言添えます。 「チラシ2,000部・反応率0.5%で新規客10人」のように、根拠のある積み上げにしてください。根拠のない「売上30%増」は、かえって計画の信頼性を落とします。
売上の伸びは、どこまでなら無理がないのでしょうか
効果の試算は、客数 × 客単価 × 営業日で積み上げてください。売上高だけを並べた表では、どこから出た数字か分かりません。
伸びの目安は3年で2倍未満です。これを超える計画にするのであれば、理由を1行ずつ添えてください。「来期は新メニュー分で客単価が500円上がる」「翌期は新規のご来店が月30人増える」というように、増える分の内訳を書きます。
🔴 なお、採択されなかった申請書でも、8割から10割が売上計画の表を置いていました。表があること自体は差になりません。差が出るのは中身の方です(落ちる申請書に共通する4つのこと)。
補助金で設備を入れると、利益は増えますか
結論から言うと、増えません。補助金は、投資にかかった費用の一部を後から補うものです。一般に、補助金収入は営業外収益や特別利益に計上され、営業利益には含まれません。
一方で、機械やソフトウェアを入れると、減価償却費が毎年かかります。広告費などは、使った年に費用として出ていきます。どちらも営業利益を押し下げる側に働きます。
国の効果検証(事業再構築補助金。持続化補助金とは別の制度です)にも、同じ傾向が出ています。採択者は不採択者より、売上の伸びが約6ポイント高い一方で、営業利益の伸びは約3ポイント低くなっています。減価償却費の伸びは約27ポイント高く、国はこれが原因と考えられると説明しています。ただし単純な比較で、因果の検証はこれからとされています。
補助金に効果が出るのは、売上と粗利が増えて、新しい費用を上回ったときだけです。たとえば設備300万円を5年で償却すると、費用は年60万円です。粗利率が40%なら、年150万円の追加売上がなければ営業利益は減ります(数字は例です)。なお、償却の負担は圧縮記帳の扱いで変わりますので、実際の数字は税理士にご確認ください。
効果の試算では、売上がいつ・どれだけ・何によって増えるのかに加えて、償却費などの新しい費用を引いても利益が残るかを確かめてください。収支計画まで書けると、なお良いとされています。
補助事業計画書は事業名30字から
補助事業計画書は、経営計画書に比べて定型的です。採択された計画書の型に沿って書けば、この部分で大きく外すことは無いと考えています。逆に、経営計画書との整合が取れていないと、ここがどれだけ丁寧でも点が付きません。
審査で見られること
審査の観点③「補助事業計画の有効性」と④「積算の透明・適切性」です。具体的で実現可能性が高いか、経営計画の方針・目標を達成するために必要かつ有効か、デジタル技術の活用があるか、事業費の積算が正確かが見られます。
悪い例は「スケジュールや費用の妥当性の記載が無い」「目標と事業内容が合致していない」「ITについての記載が無い」「数値計画が記載されていない」ものです。良い例は、誰が・いつ・どの経費を・何のためにが書かれ、写真とスケジュールがあり、収支計画が記載され、お客さまに与える効果が具体的なものです。
事務局の記入例はどこが弱いか
記入例の事業名は「地域広報及びECサイトのリニューアルによる新規顧客獲得事業」で、30字のうち18字ほどしか使っていません。経費明細では、商圏分析をしないまま10万部のチラシ配布を計上しており、半径2km圏に10万世帯が居住しているかの確認がありません。また、ウェブサイト関連費の交付申請額が0円となっており、補助金が出ないのに補助事業として実施する意味が読み取れません。この3点が弱いと考えています。
書き方の型
採択された計画書の補助事業計画書は、次の形で書かれています。
①事業名は「○○による○○事業」の形で、30字を使い切ります。「ウェットブラストマシン導入による旧車・ヴィンテージバイク整備拡大事業」「浴室設備改修による欧米インバウンド・サーファー誘致事業」等です。
②「背景・目的」では、「本事業実施の背景は以下の2〜3点です」と番号で列挙し、経営計画書の課題を再掲します。
③「具体的な取組」は、【実施事項:機器名】の見出しのあとに、なぜその機器でなければならないかを書きます。「麹を使った料理は厳格な温度管理が必要であり、発酵料理を中心に据えるには冷蔵庫が不可欠」のように書きます。
④スケジュールは「交付決定後速やかに」から始め、繁忙期(七五三・観光シーズン等)に間に合わせる形で書きます。実施体制には商工会・商工会議所と金融機関を明記します。
⑤「効果」は「以下の成果が得られるものと考えています」のあとに①②③で列挙します。
⑥「効果の試算」は3年の売上計画を表にし、経営目標の数値に着地させます。
実例文(匿名・日本料理店の取組)
当店の最大の経営課題である「高い原価率」を改善するためには、より付加価値の高い料理を提供することにより、お客さまへの提供客単価を向上させる必要があります。そこで、本事業では地域産の「麹」や「醤油」「味噌」等を活用した、「発酵料理」を中心としたメニュー展開を実現いたします。
発酵食品、特に「麹」を活用した料理については、調理に際して厳格な温度調整が必要となります。適切な温度で保管できなかった場合は、発酵が進むことで味が変化してしまいます。「発酵料理」を中心としたメニュー展開のためには、発酵食品を適切に保管するための「冷蔵庫」の導入が必要不可欠となっています。
実例文(匿名・葬祭業の効果)
上記施策を実施することにより、①遺体保冷庫の導入による複数遺体保存体制構築と、②大型ポスター印刷機導入による情報発信強化が実現できます。これにより、以下の成果が得られるものと考えています。
①遺体保冷におけるサービス品質向上と複数体保管の実現
②新規顧客誘致による「家族葬」の客数増
本事業では「売上総利益率の向上」と「客数増加による売上増」を実現します。売上総利益率を現在の37.7%から改善し、3年後には目標である47.7%超を達成いたします。
確認する3点
①事業名は25字以上30字以内か。②各機器に「なぜそれか」の理由が付いているか。③効果の試算が、経営目標の数値に着地しているか。
補助事業計画名は、本文の実施事項と効果の締めまで同じ言葉で通してください。採否を伏せて読み直したところ、この4か所の食い違いは、制度をまたいで唯一残った差でした(落ちる申請書に共通する4つのこと)。
書き終えたら確認する5点
- ① 事業名は30文字以内か。 読んで何をするのかが分かるか
- ② 経営計画書の「4-2 今後のプラン」とつながっているか。 前半に出てこない話が突然始まっていないか
- ③ 経費明細表(様式3)の費目と、2-3の取組が対応しているか。 明細にあって計画にない経費、計画にあって明細にない経費はないか
- ④ スケジュールと写真が入っているか
- ⑤ 4-2に数値が入っているか。 その数字の根拠が書かれているか
②と③のズレは、書いた本人には見えません。 印刷して、前半と後半を並べて読み返すか、商工会・商工会議所の窓口で見てもらってください。
まとめ
補助事業計画書は、経営計画書で立てた目標を、実行計画に翻訳する部分です。新しいアイデアをひねり出す場所ではありません。
- 事業名を30文字で決める。ここで内容が伝わるようにする
- 販路開拓は「誰が・いつ・どの経費を・何のために」まで書く
- 業務効率化は公募要領の例に近いものを探す
- 効果は数値で書き、その根拠を添える
- 補助金は利益を増やさない。売上と粗利が、償却費などの新しい費用を上回るかを確かめる
書く材料がそろっていれば、この4ブロックは埋まります。材料がそろわないときは、前半の経営計画書に戻ってください。後半が書けないのは、多くの場合、前半の分析が足りていないサインです。
参考
- 小規模事業者持続化補助金(中小企業庁) https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/jizoku/
- 対象になる経費・ならない経費は補助金で買えないもので解説しています
- 経営計画書(様式2前半)の書き方は経営計画書の書き方をご覧ください
- 中小企業庁「中小企業等事業再構築促進事業に係る効果検証(初期的分析)」令和7年度 https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/verification_r7.pdf
- 補助金の会計処理は日本公認会計士協会の研究報告第18号(2025年)の解説をご覧ください https://www.deloitte.com/jp/ja/services/audit-assurance/perspectives/kaikei202510-02.html

