補助金の計画を考えるとき、多くの方は「何が買えるか」から入ります。ですが、窓口で申請書を見ていて感じるのは、先に「何が買えないか」を確認しておいた方が早いということです。私は、対象外経費を先に外しておくことが、基礎審査で失格にならないための最も確実な方法であると考えています。
対象外の経費が混ざっていると、その経費が減額されるだけでは済まないことがあります。経費の大半が対象外だった場合、計画そのものが成り立たなくなります。
この記事では、対象にならない経費を費目別に整理し、そのうえで経費の選び方の手順をお示しします。
この記事でわかること
- 費目別の「対象にならない経費」
- 交付決定の前に買ってはいけない理由
- 仕入がなぜ対象外なのか
- 補助対象経費の選び方(5つの確認)
まず押さえる3つの原則
細かい費目の話に入る前に、この3つを外すと申請そのものが成り立ちません。
① 交付決定より前に買ったものは対象になりません
これが最も多い誤解です。
申請 → 採択 → 交付決定まで、少なくとも2〜3か月かかります。 準備期間まで含めると、実際に発注できるのは半年近く先になることも珍しくありません。
つまり、いますぐ必要なものは、補助金では買えません。 壊れた機械の入れ替え、来月のチラシ。こうしたものは補助金の対象になりません。
例外は展示会出展費です。出展申込の締切が早いという事情から、例外的な扱いが認められる場合があります(公募回により条件が異なりますので、必ず最新の公募要領でご確認ください)。
② 仕入は対象になりません
販売するための商品の仕入は、補助対象外です。
補助金は販路開拓のための投資に使うものであり、直接売上を獲得するための支出は対象外という考え方です。補助金で購入したものを販売した場合には、後日の納付が必要になることもあります。
なお、テストマーケティングのための少量の試作は認められる場合がありますが、手続きが煩雑になるため、あまりおすすめはできません。
③ 自社の取組でなければなりません
持続化補助金は、自社が自社のために行う取組が対象です。フランチャイズ本部が制作した広告物を購入する、他社が作った販促物を買う、といった支出は対象になりません。
費目別の対象外経費
ここからは費目ごとに見ていきます。
① 機械装置等費
汎用性が高く、目的外の使用ができてしまうものが広く対象外になります。
- 自動車等の車両・自転車・船舶・動植物
- パソコンおよび周辺機器(プリンタ・タブレット・ルータ・スキャナ等)
- 電話機(スマートフォンを含む)・テレビ・ラジオ
- 導入済みソフトウェアの更新料(Office・Adobe等)
- 販売用・賃貸用の機械装置(デモ機もNG)
「パソコンは買えない」は、持続化補助金でいちばん多いご質問です。 業務にどれだけ必要でも、汎用性が高いものは対象になりません。
② 広報費
- 商品・サービスの宣伝広告用でないパンフレット・求人広告等
- 試供品、広告の掲載がない販促品(ロゴマークだけが入ったノベルティ等)
- チラシ等の印刷物のうち、未配布分
- フランチャイズチェーン本部が製作する広告物の購入
「未配布分は対象外」は見落とされがちです。5,000部作って2,000部しか配っていない場合、配った分しか認められません。実績報告で配布の実態を問われますので、作る部数は配れる部数にしてください。
③ ウェブサイト関連費
- 商品・サービスの宣伝広告用でないWebサイト・広告
- コンサルティング・アドバイス費用(何らかの成果物が必要)
サイト制作費のうち、実際に何が納品されるのかが不明確な「ディレクション費」「コンサルティング費」は、成果物がないと認められません。 見積書の段階で内訳を分けてもらってください。
⑤ 旅費
- 視察・セミナー参加等、販路開拓につながらない旅費
⑥ 開発費
- 実際に販売する商品・製品等の原材料費、包装パッケージ費用
- 試作開発目的で使いきれなかった原材料
- 既存の包装パッケージの印刷費用
⑪ 委託・外注費
- 販路開拓や業務効率化につながらない工事
- 単なる店舗移設に関する工事
- 住宅兼用店舗の住宅部分
- 有償レンタル・有償貸与を目的としたスペースの改装費用(シェアオフィス・民泊施設はNG)
- 不動産の取得に該当する工事
なお、内外装の改修工事そのものは対象になります。 販路開拓・業務効率化につながる改修であれば認められます。
その他、こんなものもNGです
費目に関わらず、次のものは対象外です。
- 動画撮影のモデル代
- 講習会・セミナー等の参加費
- 補助金申請に係る作成・手続きの代行費用
- コンサルティング費用/アドバイス費用/相談費用
- 10万円以上の現金支出による購入物品
最後の1つは、支出の方法の話です。10万円以上を現金で払うと、その支出は認められません。 詳しくは採択後の流れと実績報告で解説していますが、補助事業では原則すべて銀行振込にしてください。
補助対象経費の選び方 ── 5つの確認
対象外を外したうえで、何を申請に載せるかを決めます。窓口ではこの順で確認しています。
① 支出額が大きいものから優先する
1〜5万円以下のものは、原則として対象に含めません。
理由は手間です。1件あたり見積書・発注書・納品書・請求書・振込明細をそろえる必要があり、小額のものを何件も並べると、実績報告の作業量が跳ね上がります。補助金額は変わらないのに手間だけが増えます。
② 金額が確定していないものは見積書を取る
工事費・改修費のように金額が固まっていないものは、申請前に見積書を取ってください。 金額の根拠がないまま申請すると、交付決定額が想定より下がることがあります。
③ 振込に対応できる取引先か
普段は現金払いの取引先でも、補助事業では振込が必須です。
とくに、これまで取引のなかった販促関係の業者については、見積書・納品書・請求書といった経理証拠書類を発行してもらえるかを、申請前に確認してください。「請求書は出していません」という取引先は少なくありません。
④ 業績向上に本当に寄与するか
取引先や知人からの紹介で決めた発注先は、いったん立ち止まって検討してください。 とくに、自社で管理・更新できないWebサイト・広告・動画は要注意です。作ったあと放置され、効果が出ないまま終わる例をよく見ます。
⑤ 自社の課題・外部環境から見て必要か
「本当に必要か」を繰り返し検討してください。
補助金があるから買う、という順番になっていないか。経営計画書に書いた課題と、その経費がつながっているか。つながっていない経費は、審査でも「目標と事業内容が合致していない」と見られます。
まとめ
- 交付決定より前に買ったものは対象外。 いますぐ必要なものは補助金では買えない
- 仕入・パソコン・車両は対象外
- コンサルティング費用・申請代行費用は対象外
- 経費は支出額が大きいものから3つ程度に絞る
- 取引先が振込と証拠書類の発行に対応できるかを先に確認する
対象になるかどうかの判断に迷ったら、申請前に商工会・商工会議所の窓口でご確認ください。 判断がつかないまま申請し、交付決定後に対象外と分かると、計画の組み直しになります。
参考
- 小規模事業者持続化補助金(中小企業庁) https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/jizoku/
- 採択後の手続きと証拠書類は採択後の流れと実績報告で解説しています
- 補助事業計画書(様式2後半)の書き方は補助事業計画書の書き方をご覧ください

