「経営計画書を書いてください」と言われても、何から手をつければよいか分からない。窓口でいちばん多いご相談がこれです。私は、9項目を順番どおりに埋めるのではなく、まず指標で課題を1つ見つけてから書き始める方が早いと考えています。
実は、経営計画書(様式2)に書く項目は9つに決まっています。順番も決まっています。この9つを順に埋めていけば、審査で見られる観点はひととおり満たせる構造になっています。
この記事では、9項目それぞれについて「何を書くのか」「どう書くと評価され、どう書くと評価されないのか」を、実際の審査の観点と対応させて解説します。
この記事でわかること
- 経営計画書に書く9項目と、その順番
- 審査で見られる4つの観点と、どこを見られるか
- 項目ごとの「良い例」と「悪い例」
- 書き終えたあとに確認すべき5点
経営計画書は9つの項目でできています
まず全体像です。
9項目は、大きく3つのかたまりに分かれます。
- STEP1 現状を分析する … 内部環境5項目(1-1/1-2/1-3/3-1/3-2)と、外部環境2項目(2-1/2-2)
- STEP2 目標とプランを立てる … 経営目標2項目(4-1/4-2)
- そのうえで、補助事業計画書(様式2後半)へ引き継ぐ
番号が飛んでいるのは、様式の並びと分析の順番が違うためです。書く順番は「1→3→2→4」と考えてください。自社を見て、市場を見て、そのうえで目標を立てる流れです。
第19回公募から電子申請の入力形式になり、項目ごとに入力欄が分かれました。どの項目も空欄では先に進めません。 分量の目安はA4で3〜6ページ程度です。
審査で見られるのは4つの観点
次に、何をどう見られるのかです。
配点の目安は、経営計画書が約40%、補助事業計画書が約40%、加点項目が10〜20%です。8割方はこの計画審査で決まります。
ここで大事なことを1つ。革新性は求められていません。 公募要領の審査の観点に「革新的であること」という文言はありません。新しいことを考えつかなければ通らない、というものではないのです。
求められているのは、自社の状況を正しく分析し、その分析に沿った計画になっているかです。
審査員はあなたの事業を知りません
もう1つ、前提として知っておいていただきたいことがあります。
1社あたりの審査時間は10〜15分程度と言われています。審査員は中小企業診断士ですが、あなたの業界にも、あなたの地域にも詳しいとは限りません。
ですから、できる限り簡単に、要点だけを伝える必要があります。凝った文章より、写真や数字を使って一目で分かるようにする方が有利です。
1. 企業概要(1-1 自社の概要/1-2 現在の売上・利益の状況/1-3 経営課題)
自社の経営状況を、きちんと把握できているかを見られる項目です。
| こう書くと評価されません | こう書きます | |
|---|---|---|
| 会社の紹介 | 文章だけ | 店舗や商品の写真、ホームページの画像を貼る |
| 経営の状況 | 売上高だけを書く | 過去2〜3期の売上高・売上総利益・営業利益の推移を書く |
| 状況の変化 | 近年の動向に触れていない | 客数と客単価の変動を書く |
| 商品・サービス | メニューを並べただけ | 特徴やセールスポイント、販路を書く |
| ターゲット | 誰に売っているか分からない | ターゲット顧客を明確にする |
売上を「客数 × 客単価」に分解する
1-3の経営課題を書くときのコツです。売上高をそのまま眺めても、原因は見えてきません。
売上高 = 客数 × 客単価
客数 = 新規客 + 既存客
客単価 = メニュー単価 × 買上げ点数
このように分解すると、問題がどこにあるかが見えてきます。
- 新規客が減っている → 宣伝広告が足りない、口コミが起きていない
- 既存客が減っている → 次回の来店を促せていない、常連向けのサービスが不足
- 客単価が下がっている → メニューを改定していない、関連購買を促せていない
「売上が減った」ではなく「新規客が減ったことで売上が減った」まで書けると、経営課題として成立します。
同業と比べる
もう一段深めるなら、粗利益率(売上高総利益率)を同業の平均と比べてください。
日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」は、業種別にかなり細かく集計されており、業界平均だけでなく「黒字かつ自己資本プラスの企業の平均」も載っています。自社が目標とすべき数字が明確になります。
- 粗利益率が同業より低い → 付加価値を上げる(値上げ、商品開発)
- 粗利益率は問題ないのに利益が出ない → 人件費比率、一人当たり売上高を確認する
2. 顧客ニーズと市場の動向(2-1 市場の動向/2-2 顧客ニーズ)
対象とする市場や商圏の特性を踏まえているかを見られます。2つは分けて書く必要があります。
| こう書くと評価されません | こう書きます | |
|---|---|---|
| 顧客ニーズ | 「◯◯という顧客がいる」程度 | ニーズが増えているのか減っているのかを数字で示す。直接聞いた「お客様の声」を反映する |
| 市場の動向 | 自社の状況しか書いていない | 消費動向、競合の出店状況、新聞記事などの新しい動きを数字で示す |
| ターゲット | 設定が大まかすぎる | 顧客ニーズと市場の動向に沿ったターゲットを設定する |
数字の裏づけは無料で取れます
ここで多くの方がつまずきます。「市場が伸びていると書きたいが、根拠がない」という状態です。
無料で使える公的統計で解決できます。
- 家計調査(総務省統計局)… 1世帯あたりの品目別支出額の推移が分かります。自分の業種に近い品目を探し、支出が伸びているか縮んでいるかを見ます
- jSTAT MAP(e-Stat)… 地図上で商圏を指定すると、人口・世帯数・年齢構成のレポートが出ます。徒歩圏なら0.5km、自転車圏なら2kmが目安です
- RESAS(地域経済分析システム)… 人口推移、人口ピラミッド、産業構造が分かります
さらに、家計調査と商圏調査を掛け合わせると推定市場規模が出せます。
1世帯あたりの年間支出額 × 商圏内の世帯数 = 推定市場規模
この数字が書けると、計画書の説得力が大きく変わります。
各ツールの具体的な使い方は、画面つきで別記事に解説しています。
家計調査で市場の伸びを調べる手順/jSTAT MAPで商圏を数字にする手順/RESASで人口と業界動向を調べる手順
3. 自社や自社の提供する商品・サービスの強み(3-1/3-2)
「自社の強み」と「商品・サービスの強み」は、分けて書く必要があります。 電子申請でも入力欄が分かれています。
- 3-1 自社の強み … ヒト・モノ・カネ・情報など、事業そのものが持つ、他社より優れた点
- 3-2 商品・サービスの強み … お客様から支持されている、同業他社との具体的な差別化要因
| こう書くと評価されません | こう書きます | |
|---|---|---|
| 商品の強み | 「◯◯力が高い」「幅広いネットワーク」など抽象的 | なぜ強みなのか、理由を具体的に書く |
| 経営者・従業員 | 商品の強みしか書いていない | 過去の経験、身につけた技術・知識に触れる |
| 視点 | 強みが読み取れない | ヒト・モノ・カネ・情報、またはQCD(品質・価格・納期)で整理する |
| 補助事業との関係 | 強みと関係のない計画になっている | 強みを活かした計画にする |
「なぜ強みなのか」まで書く
いちばん多い不足がこれです。
- ✕ 接客力が高い
- ○ 店主が18年間、常連客の好みを記録し続けており、来店時に説明なく好みの品を出せる
抽象語のままでは、審査員には何も伝わりません。自社特有の、継続的な取り組みによるものであることが分かるように書いてください。
4. 経営方針・目標と今後のプラン(4-1/4-2)
| こう書くと評価されません | こう書きます | |
|---|---|---|
| 経営方針 | 現状分析とかけ離れている | 創業時の想いや経営理念に基づいた、一貫したものを書く |
| 目標 | 補助事業の目的を書いてしまう | 目標売上高、顧客数、売上利益率などの具体的な数値目標を書く。短期(5年以内)と長期(5年超)に分ける |
| 今後のプラン | 補助事業の計画を書いてしまう | 「誰が」「何を」実施するかが読み取れるように書く |
補助事業は「手段の一つ」です
🔴 ここが最大のつまずきポイントです。
4-1の目標欄に補助事業の目的を書いてしまう方、4-2のプラン欄に補助事業の計画をそのまま書いてしまう方が非常に多くいらっしゃいます。
補助事業は、経営目標を達成するための手段の一つです。目標そのものではありません。
正しい関係はこうです。
4-1 経営目標 … 5年後に売上を◯◯万円にする
↓ そのために
4-2 今後のプラン … 新規顧客を増やす/単価を上げる/新商品を出す
↓ そのうちの一つを
補助事業計画 … 今回の補助金で実施する
ここで書いた「今後のプラン」が、そのまま補助事業計画書に引き継がれます。 逆に言えば、4-2が具体的に書けていないと、補助事業計画書も書けません。
書き終えたら確認する5点
- ① 過去2〜3期の売上高・売上総利益・営業利益の推移が入っているか
- ② 強みに「なぜ強みなのか」の理由が書かれているか
- ③ 市場の動向と顧客ニーズに、数字の裏づけがあるか
- ④ 目標に具体的な数値が入っているか
- ⑤ 4-2の「今後のプラン」と補助事業計画がつながっているか
⑤が最も重要です。経営計画書と補助事業計画書が食い違っていると、審査の観点③の評価が下がります。
よくある3つのつまずき
つまずき1:強みを抽象語で書いてしまう
「技術力が高い」「顧客対応が丁寧」だけでは、どの会社にも当てはまってしまいます。いつから、どんな取り組みで身についたのかまで書いてください。
つまずき2:弱み(経営課題)を書かない
強みだけを並べた計画書をよく見かけます。しかし審査の観点①は「自社の強みや弱みも適切に把握しているか」です。課題を書かないと、この観点が満たせません。
課題を書くことは、マイナス評価にはなりません。むしろ「把握できている」という評価になります。
つまずき3:経営計画書と補助事業計画書が別物になっている
現状分析は丁寧に書いたのに、補助事業の内容がそれと無関係、というケースです。強みを活かし、課題を解決する補助事業になっているかを、提出前にもう一度確認してください。
まとめ
- 経営計画書の記載項目は9つ。書く順番は「自社を見る → 市場を見る → 目標を立てる」
- 審査は4つの観点。配点の8割方は計画審査で決まる
- 革新性は求められていない。 分析と計画の一貫性が問われる
- 強みは「なぜ強みなのか」まで書く
- 市場の動向は公的統計で数字の裏づけを取る
- 4-2の「今後のプラン」が補助事業計画につながる
書き方の型が分かれば、経営計画書は埋められます。それでも迷われる場合は、お近くの商工会・商工会議所の窓口をご利用ください。経営指導員が一緒に考えてくれます。
参考
- 小規模事業者持続化補助金(中小企業庁) https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/jizoku/
- 小企業の経営指標調査(日本政策金融公庫) https://www.jfc.go.jp/n/findings/shihyou_kekka_m_index.html
- 家計調査(総務省統計局) https://www.stat.go.jp/data/kakei/index.html
- 統計地理情報システム jSTAT MAP(政府統計の総合窓口 e-Stat) https://www.e-stat.go.jp/gis

