経営計画書でいちばん書きにくいのが「2-1 市場の動向」です。「近隣に高齢者が多い」と書いても、根拠がなければ審査員には伝わりません。私は、商圏の数字を1つ入れるだけで、市場の動向の説得力は大きく変わると考えています。
商圏分析はこれまで、自治体が公表する資料を探すか、有料のGISソフトを使うしかありませんでした。いまはjSTAT MAPで無料にできます。地図上で店舗の位置をクリックするだけで、商圏内の人口・世帯数・年齢構成がレポートで出ます。
この記事では、レポートを出すまでの手順を画面つきで解説します。慣れれば5分で終わります。
この記事でわかること
- jSTAT MAPでリッチレポートを出す手順
- 徒歩圏・自転車圏・自動車圏の使い分け
- 出てきた数字を計画書にどう書くか
- 家計調査と掛け合わせて推定市場規模を出す方法
※ 掲載している画面は2026年9月時点のものです。jSTAT MAPは画面構成が更新されることがあるため、実際の表示と異なる場合があります。ボタンの名称が違うときは、同じ意味の項目を探してください。
jSTAT MAPとは
政府統計の総合窓口(e-Stat)が提供する、無料の地理情報システムです。国勢調査などの統計を地図上に重ねて表示できます。
会員登録が必要ですが、SNSアカウントでも登録できます。費用はかかりません。
手順1 ログインする
jSTAT MAPを開き、ログインします。初めての方は新規登録してください。
手順2 「地図で見る統計(jSTAT MAP)」を選ぶ
e-Statのトップから「地図で見る統計」に進みます。
手順3 「統計地図作成」から「レポート作成」を選ぶ
画面上部の「統計地図作成」メニューを開き、「レポート作成」を選びます。
手順4 「リッチレポート」を選び、項目にチェックを入れる
レポートの種類は「リッチレポート」を選びます。表示される項目はすべてにチェックを入れて構いません。
続いて調査年次を選びます。国勢調査の最新年次を選んでください。
手順5 エリアを設定して、地図上をクリックする
ここが最も重要な設定です。半径を3つまで同時に指定できます。
| 半径 | 想定する来店手段 | 向いている業種 |
|---|---|---|
| 0.5km | 徒歩圏 | 飲食店、理美容、クリーニング、小売 |
| 2km | 自転車圏 | スーパー、ドラッグストア、学習塾 |
| 2km以上 | 自動車圏 | ロードサイド店、専門店 |
※ 自動車圏を設定する場合は、半径ではなく「到達圏」を選んでください。実際に走行できる道路をもとに範囲が計算されます。
エリアを設定したら、地図上で自店の位置をクリックし、「リッチレポートを作成する」を押します。
手順6 レポートを確認する
数十秒でレポートが生成されます。商圏内の人口、世帯数、年齢別構成、人口ピラミッドなどが出ます。
出てきた数字を計画書にどう書くか
レポートをそのまま貼っても評価されません。数字から何が言えるのかを書いてください。
悪い例
当店の商圏は高齢者が多い。
これでは、どの店にも当てはまってしまいます。
良い例
半径0.5km圏内の人口は◯◯人、うち60歳以上が◯◯人で高齢化率は◯◯%となっています。市の平均◯◯%を上回っており、高齢の顧客に向けた商品構成が有効であると判断いたしました。
人口ピラミッドは、厚みのある年代層がそのままターゲット顧客になります。B2Cの事業であれば、ここを見て商品やサービスを設計します。
競合にも触れる
商圏分析を書くときは、競合の状況を必ず1行入れてください。 「商圏内に同業が◯店あり、うち◯店は2023年以降に出店しています」といった記述があると、市場の見方に厚みが出ます。jSTAT MAPの地図上でも、周辺の店舗はある程度確認できます。
推定市場規模を出す
もう一段踏み込むなら、家計調査と掛け合わせます。
1世帯あたりの年間支出額 × 商圏内の世帯数 = 推定市場規模
- 1世帯あたりの年間支出額 … 家計調査(総務省統計局)から取得
- 商圏内の世帯数 … jSTAT MAPのリッチレポートから取得
たとえば、ある品目の1世帯あたり年間支出が12,000円、商圏内の世帯数が8,000世帯であれば、推定市場規模は約9,600万円になります。
この数字が書けると、計画書の説得力が大きく変わります。 自社の売上がその何%を占めているのかまで書ければ、シェアの議論もできます。
家計調査の使い方は別記事で解説しています。
まとめ
- jSTAT MAPは無料。会員登録だけで使えます
- 「統計地図作成 → レポート作成 → リッチレポート」で出せます
- エリアは徒歩0.5km/自転車2km/自動車は到達圏で使い分けます
- 数字をそのまま貼らず、そこから何が言えるかを書きます
- 家計調査と掛け合わせると推定市場規模が出せます
商圏の数字は、経営計画書の「2-1 市場の動向」と「2-2 顧客ニーズ」の両方を支えます。一度出しておけば、次回以降の申請でも使い回せます。
書き方に迷われる場合は、お近くの商工会・商工会議所の窓口をご利用ください。
参考
- 統計地理情報システム jSTAT MAP(政府統計の総合窓口 e-Stat) https://www.e-stat.go.jp/gis
- 政府統計の総合窓口(e-Stat) https://www.e-stat.go.jp/
- 小規模事業者持続化補助金(中小企業庁) https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/jizoku/
- 経営計画書(様式2)全体の書き方は経営計画書の書き方をご覧ください
- 「2-2 顧客ニーズ」を数字にする方法は家計調査で市場の伸びを調べる手順で解説しています
- 人口推移と業界動向はRESASで調べる手順もあわせてどうぞ

