「これは補助金で買えますか」は、窓口で最も多いご質問です。判断の軸は3つしかありません。①交付決定より前に買っていないか ②仕入れではないか ③汎用品ではないか、の3つです。この3つを通れば、あとは費目に当てはめるだけとなります。
まず押さえる3つの原則
① 交付決定より前に買ったものは対象になりません
申請 → 審査 → 採択 → 交付申請 → 交付決定の順に進みます。発注できるのは、交付決定通知書に書かれた交付決定日以降です。採択通知が届いた段階では、まだ買うことができません。
申請から交付決定までは、現在4か月から半年かかっています。準備期間を含めると、購入できるようになるまで半年以上を要します。私は、すぐに必要な物は補助金を待たずに買う方がよいと考えています。
※ 展示会等出展費のみ、例外的に交付決定前の契約が認められる場合があります。
② 仕入れは対象になりません
補助金で買ったものを販売すると収益納付が発生します。新商品開発費で認められるのは、あくまで試作品です。テストマーケティングは可能ですが、受払簿等の管理が煩雑になるため、お勧めしていません。
③ 汎用性の高いものは対象になりません
目的外に使えてしまうもの、具体的には自動車・パソコン・タブレット・スマートフォン・電話機等です。「業務にも使う」では通りません。
8つの費目
機械装置等費/広報費/ウェブサイト関連費/展示会等出展費/旅費/新商品開発費/借料/委託・外注費の8つです。
| 費目 | 対象になりやすい | 対象外のもの |
|---|---|---|
| ① 機械装置等費 | 業務専用の機器・設備(家具も可) | PC・タブレット・スマホ、家庭用家電、汎用車両、販売用・賃借用、導入済みソフトの更新料 |
| ② 広報費 | チラシ・看板・折込・試供品・ネット広告・デジタルサイネージ | 未配布分、求人広告、ロゴのみの販促品、会社案内、FC本部の広告物 |
| ③ ウェブサイト関連費 | 販売用サイト・EC・撮影・アプリ・業務用ソフト | 宣伝用でないサイト、成果物のないコンサル |
| ④ 展示会等出展費 | 展示会への出展経費 | 販路開拓につながらないもの |
| ⑤ 旅費 | 販路開拓に必要な旅費(海外も可) | 視察・セミナー参加等の旅費、タクシー・グリーン車 |
| ⑥ 新商品開発費 | 試作・配布用パッケージ試作 | 販売する商品の原材料、未使用分、既存パッケージの印刷 |
| ⑦ 借料 | 補助事業に必要な機器等の一時的な賃借料 | 事務所・店舗の家賃 |
| ⑧ 委託・外注費 | 店舗改装・設備工事・移動販売車の改造(成果物が残る) | 単なる移設、住宅部分、不動産取得、有償貸与スペースの改装 |
- 費目別チェックリスト ── 一覧で確認する
- 買えないもの一覧 ── 対象外に絞って確認する
費目別の詳しい線引き
- 冷蔵庫・調理器具・厨房設備は買える? ── 家庭用はNG、業務用はOK
- 店舗の内装工事はOK? ── 自宅兼用店舗の注意点
- ホームページ制作は対象? ── 上限30万円・単独申請不可
- 広報費・ウェブ関連費の上限30万円と、その対策
「この設備は買えますか」を、機器ごとに次の11本にまとめています。実際に導入した流れは → 業種別の活用事例
- ウェットブラストマシン
- 遺体保冷庫
- コールドテーブル・業務用冷蔵庫
- 過熱水蒸気オーブンレンジ
- 大型ポスター印刷機
- 農産物低温貯蔵庫
- シャワールーム改修・浄化槽の拡張
- 薪ストーブ
- 空調機器
- 大口径タイヤチェンジャー等の整備機器
- キッチンカーの架装・改装
- 積載車(キャリアカー)
【第20回〜】変わった点
- 広報費・ウェブサイト関連費:それぞれ上限30万円(税込)・単独申請不可。必ず他の費目と組み合わせる
- 相見積:1件あたり50万円超(税込)で2者以上の見積が必要(従来は発注総額100万円超)
- 新商品開発費:テストマーケティング・市場調査が前提
🔴 経費を絞り込む5つの確認
経費明細表を作るときは、次の順で絞ることをお勧めしています。
① 業績向上に本当に寄与するか
🔴 「補助金が入るからやる」ではなく「売上が上がるからやる」
ここが一丁目一番地です。取引先や知人から「補助金を使えば負担なくできますよ」と言われて始めるケースは、特に注意が必要です。業績が向上しなかった支出を、これまで何度も見てきました。補助金が出ても、残りの3分の1は自社の持ち出しとなります。
② 自社で管理できるものか
自社で更新も運用もできないウェブサイト・広告・動画は、いったん立ち止まって再検討する必要があります。外注のSNS広告は、補助事業として成立しにくい部類であると考えています。
③ 支出額の大きいものから優先する
1点買うごとに見積書・発注書・納品書・請求書・振込明細・写真の6点が必要となります。少額の品を並べるほど、事務負担だけが増えます。おおむね5万円を超えるものに絞るのが実務的です。採択された計画でも、機器を2〜3点に絞っているケースが多くなっています。
④ 金額が確定していないものは、先に見積を取る
工事費・改修費は、必ず見積を取って金額を確定させてから申請します。交付決定額が補助金の上限になるため、2024年以降の物価上昇を踏まえ、公募申請時の見積はやや大きめに組んでおく必要があります。
⑤ 振込に対応できる取引先か
普段は現金で取引している先でも、補助事業では銀行振込が必須となります。書類(見積書・納品書・請求書)を出してもらえるかも、事前に確認する必要があります。ここでつまずく例が本当に多くなっています。
実務で対象にならなかった例
- 動画撮影のモデル代
- 講習会・セミナー等の参加費
- 補助金申請書の作成・手続き代行費用
- 成果物のないコンサルティング・アドバイス・相談費用
- 10万円以上の現金支出(10万円未満でも、補助対象物はすべて振込にしていただいています)
対象外経費が1つでも入っていると、基礎審査の段階で失格となる可能性があります。私は、迷う支出は入れない方が安全であると考えています。
次に読む
- 計画書の書き方 ── 経費を計画とつなげます
- 申請から入金まで ── 交付決定と実績報告
- どの補助金を使うべきか ── 持続化では買えないものがあるとき
ご注意(免責事項)
経費の可否は、最終的に補助金事務局の判断によります。本ページは筆者の実務経験にもとづく整理であり、公式見解とは異なる場合があります。申請にあたっては必ず最新の公募要領・よくあるご質問をご確認ください。個別のご相談は、お近くの商工会・商工会議所の窓口をご利用ください。
