創業18年、コース料理を中心に客単価4,000円程度で営業する日本料理店の事例です。店主は都内の老舗で修業した経験を持ち、7〜8皿のコースで中高年の女性客から支持を得ています。
指標で見つけた課題
「小企業の経営指標(日本料理店)」との比較では、指標企業の売上総利益率が66.5%であるのに対し、当店は42.2%となっていました。同業他社より23%程度低い水準であり、早急な改善が必要でした。
値上げには取り組んでいたものの、それを上回る仕入価格の上昇があり、経営課題は何よりも「高い原価率」にあると整理しています。
統計で裏づけた
商圏の分析では、50代の比率が高く、高齢者比率が2025年に39%まで上がることが示されていました。
また、総務省統計局「jSTAT MAP」で自動車15分圏を確認したところ、複数の人口増加地域があることがわかりました。これまで宣伝広告を行っていなかったため、商圏を広げる余地があると判断しています。
「家計調査」では「和食」の世帯支出が2024年に24,080円となり、感染症拡大前の最高値を上回っています。「飲酒」の支出も同年に感染症拡大前の水準まで回復しており、地域の特産である日本酒を組み合わせる計画としました。
買ったもの・なぜそれか
導入したのは「発酵料理の仕込み・保管に用いる冷蔵庫」と「店舗外装の改修」です。
麹を使った料理は厳格な温度管理が必要であり、適切に保管できなければ発酵が進んで味が変わります。発酵料理を中心に据えるには冷蔵庫が不可欠でした。
また、住宅を改装した店舗であり、店外と店内の間に遮蔽物が無かったことから、外装を改修して「隠れ家的」な非日常感を作り、料理の付加価値を高める計画としています。
目標数値と3年計画
経営目標は「売上原価率50%未満」であり、計画2期目に53%、計画3期目までに50%未満の達成を見込んでいます。
併せて、稼働率の低い平日の集客を強化し、現有の経営資源での売上増を目指しています。
申請書ではこう書きました
以下は、実際に提出した様式2からの抜粋です。事業者名・地名・取引先名・商品の固有名は伏せ、売上の実額は概数にしています。比率と公的統計の数値は原文のままです。
当店の課題は何よりも「高い原価率」にあると考えています。原価率改善のため、メニューの値上げ等に取り組んでいるものの、それ以上の仕入価格上昇により、抜本的な改善が必要となっています。そこで、新たに以下2つの改善に取り組みたいと考えています。
◯「発酵食」を中心としたメニュー提供による付加価値の向上 ◯感染症に対応した上での客席数の増加
様式2 経営課題
当店を運営する経費のうち、仕入価格や水道光熱費が増加している。仕入価格については、農業および漁業における原油価格等経費の高騰が販売価格に転嫁されているものであり、また水道光熱費についても原油価格の上昇の影響を受けている。いずれも、原油価格、LPガス価格などの高騰による影響であり、当社の収益性低下の要因となっている。
様式2 重点政策加点(事業環境変化加点)
私は、2つ目の抜粋にも注目していただきたいと考えています。これは加点を得るための「事業環境変化加点」の記載欄です。物価高騰の影響を、仕入と水道光熱費の2経路に分けて、原因(原油価格・LPガス価格)まで遡って書いています。加点欄は空欄にせず、こう書けば1項目分の加点が得られます。
同じ業種の方へ
私は、飲食店の様式2で最も書きやすい課題は「原価率」であると考えています。
指標との差が23ポイントという数字は、それだけで審査員に伝わります。冷蔵庫という平凡に見える機器も、「発酵食品の温度管理」という理由が付けば、課題解決の手段として説明できます。
冷蔵庫の対象・対象外は「経費の判断」にまとめています。


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