「うちの業界は厳しくて」。窓口でよく伺う言葉です。
ですが、経営計画書にそのまま「業界は厳しい状況です」と書いても評価されません。審査員が知りたいのは、その業界が実際に伸びているのか縮んでいるのか、という数字です。私は、RESASで人口ピラミッドを1枚出すだけで、「厳しい」という感想が根拠に変わると考えています。
RESAS(リーサス)を使うと、自社の業種を選ぶだけで、業界の規模と動向が表示されます。 費用はかかりません。
この記事では、小規模事業者が使うべき2つのメニューにしぼって、手順を解説します。
この記事でわかること
- RESASの7つのマップのうち、使うべき2つ
- 商圏の人口構成(人口ピラミッド)の出し方と読み方
- 自社業界が拡大しているか縮小しているかの調べ方
- 業界の動向と自社の損益から打ち手を決める「4つの信号」
- 調べた数字を計画書にどう書くか
RESASとは
RESAS(地域経済分析システム)は、人口動態や地域経済のデータをグラフや地図で「見える化」する国のシステムです。2015年4月から提供されており、インターネット経由で誰でも無料で利用できます。
🔴 2025年3月に画面が新しくなりました
RESASは2025年3月に新システムへ移行しています。 旧システムの解説記事や書籍が残っていますが、メニューの名前も画面も変わっています。 この記事は新システム(2026年6月時点のメニュー構成)にもとづいて書いています。
7つのマップがありますが、使うのは2つです
RESASには次の7つのマップがあります。
- ① マーケティングマップ
- ② 観光マップ
- ③ 人口マップ ← 使います
- ④ 産業構造マップ ← 使います
- ⑤ 地域経済循環マップ
- ⑥ 農林水産業マップ
- ⑦ 医療・介護マップ
自治体の政策立案を想定した機能が多く、小規模事業者が申請書のために使うのは、③と④の2つで十分です。
- 人口マップ → 商圏に誰が住んでいるか(経営計画書の 2-1 市場の動向)
- 産業構造マップ → 自社業界が伸びているか(同じく 2-1、および 1-3 経営課題)
手順A 商圏の人口を見る(人口マップ)
メニュー:人口マップ > 3-1 人口構成分析
市区町村を選ぶだけで、人口の推移と人口ピラミッドが表示されます。
人口推移グラフ
総人口・年少人口・生産年齢人口・老年人口の4本が、1980年から2050年まで5年刻みで描かれます(2025年以降は推計値です)。
見るべきは生産年齢人口(15〜64歳)です。
- 雇用の担い手がどれだけ残るか
- 働く世代の消費がどれだけ見込めるか
上の例(千葉県八千代市)では、総人口は2025年頃をピークに横ばいですが、生産年齢人口は2030年以降に減少に転じ、老年人口は増え続けます。 「人口は減っていないから大丈夫」ではないことが、この1枚で分かります。
人口ピラミッド
5歳刻みの構成比を、現在と将来(例では2020年と2050年)を並べて表示できます。
厚い年代層が、B2C事業のターゲット顧客です。 例では2020年時点で45〜49歳の層が最も厚く、2050年には75〜79歳が最も厚くなります。いま40代向けに設計した店は、そのお客様と一緒に歳を取っていくということです。
計画書への書き方
当店の所在する◯◯市の生産年齢人口は、2020年の◯◯人から2050年には◯◯人へ◯◯%減少する見込みです。一方、65歳以上人口は◯◯%増加します。
「近隣に高齢者が多い」ではなく、比率と将来の見込みまで書く。 これで根拠のある記述になります。
手順B 自社業界が伸びているかを見る(産業構造マップ)
メニュー:産業構造マップ > 4-3 経営環境分析
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいメニューです。選ぶのは2つだけです。
① 自社の業種を選ぶ
経済センサスの産業分類で、大分類 → 中分類 → 分類コードの順に選びます。
例では「M 宿泊業,飲食サービス業」→「76 飲食店」→「761 食堂,レストラン(専門料理店を除く)」と選んでいます。
自社の業種が分からないときは、画面から e-Stat(政府統計の総合窓口)で検索できます。 業種名がうまく見つからないときは、検索する単語を変えて調べてみてください。
② 自社の経営状況を選ぶ
「黒字傾向」か「赤字傾向」を選ぶだけです。難しい入力はありません。
出てくるもの
「経営環境分析シート」が1枚表示されます。載っているのは次の2つです。
- 自社業界の規模 … 経済センサス活動調査による付加価値額(全国)
- 自社業界の動向 … 経済構造実態調査による付加価値額と、その前年比
例では、飲食店(食堂・レストラン)の付加価値額が前年比 +12.4% と表示されています。この1行が「市場の動向」の根拠になります。
シートはダウンロードできます。スマートフォンでも表示できます。
業界の動向と自社の損益で、打ち手が決まります
経営環境分析シートの下部には、4つの信号が表示されます。これが非常によくできています。
| 自社業界 | 自社 | 信号 | 優先すべき取組 |
|---|---|---|---|
| 拡大傾向 | 黒字傾向 | 🔵 青信号 | 供給を増やす取組、単価を上げる取組 |
| 拡大傾向 | 赤字傾向 | 🟡 黄信号 | 赤字の原因を確認する取組(本業で稼げていないのか、無駄な支出が多いのか) |
| 縮小傾向 | 黒字傾向 | 🟠 点滅信号 | 自社の強みを更に磨く取組、増加傾向の新たな業界を開拓する取組 |
| 縮小傾向 | 赤字傾向 | 🔴 赤信号 | 社内で取り組める費用を下げる取組(固定費・変動費の削減) |
持続化補助金の販路開拓が最も効くのは、青信号と点滅信号です。
- 青信号 … 業界が伸びていて自社も黒字。設備を入れて供給を増やす計画が素直に通ります
- 点滅信号 … 業界は縮小しているが自社は黒字。強みを磨く計画、または隣接する伸びている市場へ出ていく計画になります
- 黄信号・赤信号 … まず赤字の原因を確認する段階です。補助金で広告を打つ前に、収支の構造を見直したほうがよい場合があります
この4分類は、そのまま経営計画書の「1-3 経営課題」と「4-1 経営方針・目標」の骨格に使えます。
もう一歩使うなら:地域ビジネス環境分析
メニュー:産業構造マップ > 4-5 地域ビジネス環境分析
都道府県・市区町村を選ぶだけで、次の4つが一括で表示されます。
- ① 将来の人口増減
- ② 業種別の事業所数・従業者数
- ③ 地域住民の消費状況
- ④ 観光客(地域外)の消費状況
手順AとBを1画面で済ませたいときは、こちらから入ると早いです。 商圏の人口と、地域の同業者の数を同時に確認できます。
出典の書き方
RESASの画面を申請書やチラシに貼るときは、出典を明記してください。
出典:RESAS(地域経済分析システム)を加工して作成
トリミングや強調枠の追加も「加工」に当たります。 出典とは別に、加工した旨も記載してください。また、画面内の権利表示(地図データの提供元表示など)は消さないでください。
3つのツールの使い分け
RESASだけで完結するわけではありません。目的別に使い分けます。
| 知りたいこと | 使うツール |
|---|---|
| 自社業界が伸びているか | RESAS(産業構造マップ > 経営環境分析) |
| 商圏に誰が住んでいるか(市区町村単位) | RESAS(人口マップ > 人口構成分析) |
| 商圏に誰が住んでいるか(半径0.5km・2kmなど) | jSTAT MAPjSTAT MAPで商圏を数字にする |
| その品目に世帯がいくら使っているか | 家計調査家計調査で市場の伸びを調べる |
店舗の徒歩圏を数字にしたいときはjSTAT MAP、商品の市場が伸びているかを見たいときは家計調査です。RESASは市区町村より細かい単位では見られないため、商圏分析はjSTAT MAPのほうが向いています。
まとめ
- RESASは無料。2025年3月に新システムへ移行しており、古い解説記事とは画面が違う
- 使うのは人口マップ(3-1 人口構成分析)と産業構造マップ(4-3 経営環境分析)の2つ
- 人口マップでは生産年齢人口の推移と人口ピラミッドの厚い層を見る
- 産業構造マップは業種と黒字/赤字を選ぶだけ。業界の付加価値額の前年比が出る
- 4つの信号で、補助事業の方向性が決まる
- 使ったら出典と加工した旨を必ず書く
参考
- RESAS(地域経済分析システム) https://resas.go.jp/
- 地域経済分析システム(RESAS) 内閣官房・内閣府 https://www.chisou.go.jp/sousei/resas
- 徒歩圏・自転車圏の商圏分析はjSTAT MAPで商圏を数字にする(jSTAT MAP)
- 品目別の市場の伸びは家計調査で市場の伸びを調べる(家計調査)

