親族が50年超営んできた和菓子店を、宝石加工の職人だった代表が承継した事例です。まんじゅう・どら焼きに加え、夏季限定の葛を使った冷菓が常連客を集めています。仕入商品を置かず、餡から練る全品自家製が特徴です。
指標で見つけた課題
「小企業の経営指標(菓子小売業)」との比較では、売上総利益率と従業員1人当たり売上高がともに同業他社を下回っていました。
粗利率は原材料費の高騰と値上げの遅れが、1人当たり売上は前経営者が高齢で宣伝広告を行ってこなかったことが要因です。
経営課題は「付加価値の高い商材による売上高の拡大」であると整理しています。
統計で裏づけた
「家計調査」では、生和菓子の支出は年々減少していたものの、「他の生和菓子」が6,952円から7,321円へ増加していました。定番品ではなく「目新しさ」のある商品に伸びしろがあると読み取っています。
また、「jSTAT MAP」で商圏の人口ピラミッドを確認したところ、高齢化率は49.4%であり、2人に1人が60歳以上でした。
商圏内の既存顧客に頼った運営は困難であり、観光客等の「商圏外」から新規顧客を獲得する必要があると判断しています。
買ったもの・なぜそれか
導入したのは「コールドテーブル(冷蔵設備)」と「看板」です。
地域特産の果物を使った新しい冷菓を開発・量産するには、仕込んだ果物を一定量保管する場所が必要でした。既存の保管場所では新商品を作る余力が無かったためです。
看板は先代が作ったもので老朽化し視認性が低くなっており、商圏外からの来訪者に店を認知してもらうために刷新しています。
目標数値と3年計画
経営目標は「同業他社と同程度の年商850万円台」であり、2年後の達成を目指しています。
観光シーズンが始まる2〜3月に新商品を販売できる体制を整え、翌夏の販売拡大につなげる計画です。
申請書ではこう書きました
以下は、実際に提出した様式2からの抜粋です。事業者名・地名・取引先名・商品の固有名は伏せ、売上の実額は概数にしています。比率と公的統計の数値は原文のままです。
親族が50年超にわたり運営してきた和菓子店を引き継ぎ、事業承継いたしました。代表は、これまで宝石の加工業に携わっていた経験を持っており、まだまだ修行中ではあるものの、技工を凝らした和菓子の製造販売に取り組みたいと考えています。
重要な指標と見込んでいる「売上総利益率」および「従業員1名あたり売上高」共に同業他社を下回っている状況です。売上総利益率については、原材料費の高騰が影響しており、また充分な値上げができていないことからも、低い水準となっています。一方で、「従業員1名あたり売上高」についても低い状況です。前経営者は高齢であったことから、充分な宣伝広告を実施して参りませんでした。
様式2 1. 企業概要
「生和菓子」の支出金額は、年々減少傾向にありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響下では若干持ち直している状況です。既存製品である「まんじゅう」や「ようかん」については引き続き厳しい状況ではあるものの、「他の生和菓子」が6,952円から7,321円に向上した点は、今後の事業展開において重要な視点であると考えています。通常の製品ではなく、「目新しさ」のある付加価値の高い和菓子の開発に取り組む必要があると考えています。
同調査によると、当店商圏における高齢化率は49.4%となっており、人口の2人に1人が60歳以上の高齢者であることがわかりました。今後も高齢化率は向上することが見込まれていることから、当店商圏内の既存顧客に頼った事業運営は困難であると考えています。
様式2 2. 顧客ニーズと市場の動向
私は、この抜粋で学べるのは「弱みの書き方」であると考えています。「前経営者は高齢であったことから、充分な宣伝広告を実施して参りませんでした」という一文は、弱みでありながら、そのまま補助事業(看板の刷新)で解決できる形になっています。解決できない弱みを書いてしまうと、補助事業とのつながりが切れます。
同じ業種の方へ
私は、承継直後の事業者が申請するときは「先代がやってこなかったこと」を弱みとして書くのが最も素直であると考えています。
宣伝広告の不足は、そのまま看板という補助事業で解決できる弱みになります。
「弱みは補助事業で解決できるものを書く」という原則は「計画書の書き方」にまとめています。


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