採択された申請書と、採択されなかった申請書を読み比べました。はじめは結果を知ったうえで読んでいたのですが、それでは通った原稿ほど筋が通って見えてしまうことに気づき、採否を伏せて全件を読み直しました。
読み直すと、最初に見えていた大きな差の多くは消えてしまいました。残ったのは4つだけです。この記事では、その4つと、消えてしまったものの両方をお伝えします。
この記事でわかること
- 採否を伏せて読み直しても残った、4つの違い
- 公募回の採択率が、書き方より先に効くということ
- 増やしても差が出なかったもの(字数・図や写真の枚数・売上計画表があること 等)
- 提出の前に、どこから見直せばよいか
本記事の情報について
筆者が作成・支援した申請書のうち、採択・不採択がはっきりしているものを、採否を伏せて読み直した結果をもとにしています。件数は限られており、統計として確かめたものではありませんので、傾向としてお読みください。制度の取扱いは公募回により変わります。申請時は必ず最新の公募要領でご確認ください。
1. 同じ内容でも、出した回で結果が変わります
書き方の話に入る前に、先にお伝えしたいことがあります。採否は、まず公募回ごとの採択率に大きく左右されます。
ものづくり補助金の採択率は、回によって29%から62%まで動いています。手元の計画書にも、文の単位で8割以上が同じ内容でありながら、ある回では採択されず、別の回では採択されたものがあります。書き方はほとんど変えていないのに、結果が変わったということです。
持続化補助金でも、一般型・通常枠の採択率は第1回の90.9%から第16回の37.2%まで下がり、直近3回は47.2%から51.0%で推移しています(持続化補助金の採択率)。
読み直していて、もうひとつはっきりしたことがあります。採択率が高かった2020年から2021年ごろの申請書では、どの項目にも差が出ませんでした。差が見えたのは、採択率が下がった2022年以降の申請書だけです。
ですので、書き方で上げられるのは「厳しい回で落とされない確率」であると考えています。書き方だけで採否が決まるわけではありません。それでも、落とされる理由を減らしておく価値はあると考えています。
2. 採否を伏せて読み直したら、何が残ったのでしょうか
結果を知ったまま読むと、通った原稿は筋が通って見え、落ちた原稿は粗く見えます。これは読み手の側の問題です。そこで結果を伏せ、どちらか分からない状態で全件を読み直しました。
残ったのは、この4つです。とくに①は、持続化補助金だけでなく、千葉県の補助金でも、国の大型の補助金でも同じ向きで残りました。制度をまたいで一貫して残った、唯一の項目になります。
3. 最初の見立ては、外れていました
正直にお伝えします。結果を知って読んでいたときには、もっと大きな差が見えていました。ところが伏せて読み直すと、その差はほとんど消えてしまいました。
| 読んだ項目 | 結果を知って読んだとき | 採否を伏せて読み直したとき |
|---|---|---|
| 話の途中が抜けていないか | 採択された側はほぼ全部が埋まり、そうでない側は大半が抜けていた | どちらも8割台。差なし |
| 取組の目的が販路開拓になっているか | 採択された側は全部、そうでない側は半分程度 | どちらも9割前後。差なし |
| 最初の課題が最後まで解かれているか | 採択された側が9割台、そうでない側が8割弱 | どちらも7割台。差なし |
これは、読み手が結果を知っていたことによる思い込みであったと考えています。書き方の良し悪しを見ていたのではなく、「通ったのだから筋が通っているはずだ」と読んでしまっていたということです。
ですので、これらを採否を分けた証拠として扱うのはやめました。ただし、無意味だという意味ではありません。公表されている不採択の理由も、審査員のコメントも、ほとんどが「根拠が書かれていない」という形をしています。話の途中を飛ばさない書き方は、審査員が確かめやすくするための作法として続ける価値があると考えています。
4. ① 計画名と本文の言葉は、そろっていますか
4つのうち、いちばん確かなものです。計画名、事業区分や類型、本文の実施事項、効果の締め。この4か所で言葉が食い違っている申請書は、採択された側では4割ほど、そうでない側では6割ほどありました。
実際にあったのは、次のような食い違いです。
- 事業名が、冒頭と本文と効果欄で3通りになっている
- 省人化の類型を選んでおきながら、効果の締めが「生産量が増える」になっている
- 冒頭で選んだ事業区分と、本文で書いている話が別物になっている
いずれも中身が悪いわけではなく、書いているうちにずれてしまったものです。そして、提出の前に全文検索をかければ必ず見つかります。手間に対していちばん割が合う見直しであると考えています。
5. ② 「容易に」「必ず」で、根拠を飛ばしていませんか
2つめは断言です。「容易に」「必ず」「確実に」という言葉が出てきたら、その前後で説明を飛ばしていないかを見てください。この3語は、根拠の代わりに使われていることが多くなっています。
採択率が下がった2022年以降の申請書では、断言で飛ばしている原稿は採択された側で1割台、そうでない側では5割を超えていました。
書き換えの例
| 書き方 | |
|---|---|
| 惜しい例 | 生産量が3倍になるため、百貨店への受注拡大は容易であると見込んでいます。 |
| 直した例 | 取引中の百貨店から月〇個の追加発注を打診されていますが、生産量が足りず〇個をお断りしています。生産量を3倍にすることで、この打診分(年〇円)を受注できます。 |
直した例では、断言が消えた代わりに、打診されている数量と、断っている数量という確かめられる数字が入っています。審査員が点を付けられるのは、こちらの書き方です。
6. ③ その需要は、本当にありますか
3つめは需要の実在です。これは新しいことを始める計画ではっきり差が出ました。事業再構築補助金・ちばチャレンジ・ものづくり補助金では、声・打診・引き合い・断った注文のいずれかが書かれている原稿が、採択された側では9割近く、そうでない側では半分程度でした。
| 強さ | 根拠の種類 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| いちばん強い | 先に試してみた結果 | 試験的に販売しており、1か月で〇件の注文をいただいています |
| 強い | 取引先やお客さまの反応 | 取引先から月〇個の追加を打診されていますが、〇個をお断りしています |
| 中 | 自社で測った数字 | 作業日報では、この工程に1回あたり〇分かかっています |
| 補強 | 公的統計 | 総務省統計局「家計調査」では、〇〇への支出が〇%増えています |
| 使わない | 掛け算でつくった市場 | 人口 × 発症率 × 想定シェア で市場を出し、その10%を目指す |
化粧品製造卸の事例では、海外からの引き合いがすでにあることが出発点になっています。自動車整備業の事例では、外に出していた作業の件数が、需要がある証拠になっています。
7. ④ その目標は、測れますか
4つめは目標です。公表された不採択の理由書に「目指す食感は抽象的で、各工程の目標の妥当性が不明確」という指摘があり、その指摘に沿って直した版が採択されています。書き直しで結果が変わった、いちばん確かな例です。
| 書き方 | |
|---|---|
| 惜しい例 | 本事業により、お客さまが求めるふんわりとした口どけを実現します。 |
| 直した例 | 本事業では口どけを生地の比重で管理し、現状の〇から〇に下げます。社内の官能評価(5名・5段階)で平均4以上を、試作の合格基準とします。 |
「ふんわり」「高品質」「満足度の向上」といった言葉は、第三者が確かめられません。測れる指標に置き換えるか、目標から外してください。置き換えが難しいものは、試作の評価に回す方法もあります。
8. 書き直して通った3組に、共通していたこと
たとえば、ある原稿では10ある工程のうち設備を入れたのは1工程だけで、生産量は3倍になりました。ところが売り先の打ち手が書かれていません。効果は「百貨店への拡大は容易」の一言で結ばれていました。同じ事業者が通った回では、ホームページと展示会という知らせる手段に投資しています。
一度は採択されず、書き直して採択された原稿が3組あります。どれも文章の上手さではなく、中身の直しでした。
| 直したこと | 中身 |
|---|---|
| ① 予告と回収を対で直す | 上流(課題・プラン)と下流(取組・経費)を同じ言葉にそろえる |
| ② 途中の段に根拠を足す | お客さまの問い合わせ、取引先への打診、素材の評価 |
| ③ 打ち手を補助事業の中へ | 販路開拓の打ち手を「補助対象外」に逃がさない |
| ④ 事実で実現性を示す | 打診済み、外部の業者と役割、販売開始の時期 |
具体的には、次のような直しです。
菓子の製造小売:強みの欄で「情報発信が必要」と予告しながら、取組は冷蔵設備1本だけでした。実施事項②に看板とのぼりを足し、経費にも広報費を入れ、事業名を「試作開発」から「販路開拓」に改めています。
移動販売:目標が「生産性の向上」で、取組は既存の器具の流用でした。プランに「客単価の向上」を1行足し、取組と効果の2か所で回収しています。体制の表に、改修を頼む外部の業者も加えました。
和食店:取組が冷蔵庫1本で、仕出しの販路は補助対象外に置かれていました。「持ち帰りたい」というお客さまの声を冒頭に移し、販路の打ち手を補助事業の中に入れています。
🔴 いずれも1か所だけ直していません。上流を直したら、下流も対で直しています。看板を足すなら、課題とプランにも「知らせる」という言葉を入れ、経費にも広報費を入れます。この対応が崩れていると、直したつもりでも筋が通りません。
9. 書いた本人以外に、通して読んでもらいましたか
読み直しで意外だったことがあります。項目ごとにチェックするよりも、通して読んだときの印象の方が、結果をよく言い当てました。「なんとなく通りにくそう」と感じた原稿は、採択された側では3割ほど、そうでない側では6割ほどありました。
項目のチェックでは拾えないものを、通読は拾っているということです。ですので、提出の前に、書いた本人以外の方に通して読んでもらい、どこで引っかかったかを聞き出すことをお勧めしています。商工会・商工会議所の経営指導員は、この読み方に慣れています。
10. 増やしても差が出なかったものは、何でしょうか
読み比べていて意外だったのは、手間をかけがちなところほど差が出ていないことでした。たとえば図や写真の枚数は、採択された側もそうでない側も7枚から8枚で、ほとんど変わりませんでした。
| よく言われること | 読み直した結果 |
|---|---|
| 字数はできるだけ埋めた方がよい | 全体の字数も、欄ごとの字数も、ほぼ同じでした |
| 図や写真は多いほどよい | どちらも7枚から8枚で、枚数に差はありませんでした |
| 売上計画の表を付ければ通る | 採択されなかった側も、ほとんどが表を置いていました。表の有無は差になりません |
| 設備と広報の2本立てにすると有利 | 取組の組み方では差が出ませんでした。設備だけで採択された例もあります |
| 統計は2種類以上使った方がよい | 伏せて読み直すと差が消えました。数よりも、自社の商圏や引き合いにつながっているかどうかです |
| 見出しに審査項目の言葉を入れるとよい | どちらも入れています。差は、見出しの下に数字と根拠があるかどうかです |
同じ時間をかけるのであれば、空いた行を埋めるよりも、計画名と本文の言葉をそろえ、断言を数字に置き換える方が効くと考えています。
11. 提出の前に、どこから見直せばよいですか
上から順に、直したときの効き方が大きい順です。
- 他の事業者の名前や、別の業種の商品名が残っていないか(全文検索で0件にする)
- 計画名・事業区分や類型・本文の実施事項・効果の締めで、同じ言葉を使っているか
- 「容易に」「必ず」「確実に」を使っていないか。使っているなら数字に置き換える
- 新しいことを始める計画なら、声・打診・引き合い・断った注文のどれかを書いたか
- 目標が測れる形になっているか。抽象語だけの目標が残っていないか
- 売上計画が客数 × 客単価で積み上がっており、伸びが3年で2倍未満に収まっているか
- 書いた本人以外の方に、通して読んでもらったか
最後の項目を飛ばさないでください。自分の原稿は、自分ではいちばん筋が通って見えるためです。
12. この見立ての限界は、どこにありますか
ここまでの内容は、統計として確かめたものではありません。次の点にご注意ください。
- 読み直した件数は限られており、とくに採択されなかった申請書は少数です
- 公募回ごとに採択率が上下しますので、回の厳しさと書き方の差が混ざっています
- 採択率が高かった時期の申請書では、どの項目にも差が出ませんでした
- 読み直しの判定にも、読み手による揺れが残っています
- 採否が分からないままの申請書も残っています
- 審査の配点・審査員の人数・1件あたりの時間は公表されておらず、確認困難です
ですので、ここに書いたことは「こうすれば通る」ではなく、「落とされる理由を減らすための見直し」としてお読みいただければと考えています。
13. よくある質問(FAQ)
Q. 書き方を直せば、採択されますか?
採否は、まず公募回ごとの採択率に大きく左右されます。ほぼ同じ内容の計画書が、ある回では通らず、別の回では通った例もあります。書き方で上げられるのは「厳しい回で落とされない確率」であると考えています。
Q. 文章が上手でないと落ちますか?
文末の整え方や言い回しでは、差が出ていません。採択された申請書とそうでない申請書とで、文体の傾向はほとんど変わりませんでした。
Q. 申請書は長く書いた方がよいですか?
全体の字数でも、欄ごとの字数でも差は出ていません。空いた行を埋めるよりも、計画名と本文の言葉をそろえる方が確かです。
Q. 売上計画の表は必ず付けるべきですか?
付けてください。ただし、採択されなかった申請書でも、ほとんどが表を置いていました。表があること自体は差になりません。客数と客単価に分けて積み上げているか、伸びが3年で2倍未満に収まっているかをご確認ください。
Q. 自分では良い出来に見えます。どう確かめればよいですか?
書いた本人以外の方に、通して読んでもらってください。読み直しでは、項目ごとのチェックよりも、通して読んだときの印象の方が結果をよく言い当てました。引っかかった箇所を聞き出すことをお勧めしています。
14. まとめ
- 採否は、まず公募回ごとの採択率に左右されます。書き方で上げられるのは「厳しい回で落とされない確率」です
- 採否を伏せて読み直して残ったのは、①言葉がそろっている ②断言で飛ばしていない ③需要が実在する ④目標が測れる、の4つです
- ①の言葉の食い違いは、制度をまたいで残った唯一の項目で、全文検索で見つかります
- 字数、図や写真の枚数、売上計画表があること自体では差が出ていません
- 書いた本人以外に通して読んでもらうことが、いちばん手軽な確かめ方です
参考(一次情報)
ご注意(免責事項)
本記事は制度の正確な理解に努めて作成していますが、申請にあたっては必ず最新の公募要領・参考資料・よくあるご質問をご確認ください。また、事業計画書・申請書の作成方法に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく個人的な見解であり、補助金事務局・中小企業庁・経済産業省の公式見解とは異なる場合があります。最終的なご判断は、商工会・商工会議所や事務局にご確認のうえお願いいたします。

