持続化補助金を調べているうちに、「うちは販路開拓より先に、代替わりの方ではないか」と気づかれる方がいます。そういう場合に検討できるのが事業承継・M&A補助金ですので、ここでは持続化補助金との違いに絞って整理します。
1. どんなときに、こちらを選ぶか
どちらを使うかで迷ったら、次の3点を見てください。
- 5年以内に代替わりの予定があること
- 投資額が100万円を超えること
- 店舗や工場の改修を含むこと
この3つが当てはまるなら、持続化補助金よりも事業承継・M&A補助金の方が合うと考えています。
| 持続化補助金〈一般型・通常枠〉 | 事業承継・M&A補助金〈事業承継促進枠〉 | |
|---|---|---|
| 補助上限 | 50万円(特例をあわせて最大250万円) | 800万円(賃上げ実施時1,000万円) |
| 補助率 | 2/3 | 2/3(小規模事業者等)または1/2。800万円を超える部分は1/2 |
| 補助下限 | なし | 100万円 |
| 賃上げ要件 | 賃金引上げ特例を使う場合は年平均3% | なし(賃上げは任意) |
| 建物・店舗の改修 | 簡単な内装工事は委託・外注費で対象 | 設備投資費として対象 |
| 採択率 | 47.2%(第19回・申請16,576件/採択7,819件) | 60.8%(第10〜14次の平均) |
2. 枠は5つあります
枠は5つあり、代替わりにあわせて設備投資をするなら事業承継促進枠、買い手や売り手として専門家に払う費用なら専門家活用枠、統合後の体制づくりならPMI推進枠、事業の一部をたたむなら廃業・再チャレンジ枠を選びます。
| 枠 | 補助率 | 補助上限 |
|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 2/3(小規模事業者等)/1/2 | 800万円(賃上げ実施時1,000万円) |
| 専門家活用枠 買い手支援類型 | 2/3 | 600万円(デューデリジェンス実施時800万円) |
| 専門家活用枠 売り手支援類型 | 1/2 または 2/3 | 600万円(同上) |
| PMI推進枠 専門家活用類型 | 1/2 | 150万円 |
| PMI推進枠 事業統合投資類型 | 2/3(小規模事業者等)/1/2 | 800万〜1,000万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 2/3 | 300万円 |
補助下限は、事業承継促進枠が100万円、専門家活用枠が50万円です。
3. 対象経費が広いことが、いちばんの違いです
対象経費の広さが、いちばんの違いです。持続化補助金でも簡単な内装工事であれば委託・外注費として対象になりますが、事業承継・M&A補助金は店舗や工場の改修そのものを設備投資費として計上できますので、規模の大きい工事まで見てもらえます。
あわせて、仲介手数料、デューデリジェンスの費用、セカンドオピニオン、廃業の支援費、在庫の廃棄費、解体費、土壌汚染の調査費も対象です。承継にともなって出ていくお金を、ひととおり拾える作りになっています。
なお、建物に関わる経費には、制度ごとに要件が定められています。持続化補助金にも建物についての要件がありますので、新築・増築・改修のどれに当たるかを含めて、申請の前に必ず公募要領でご確認ください。
4. 賃上げの要件がありません
賃上げの要件がないことも、実務上は大きい違いです。持続化補助金は賃金引上げ特例を使うと年平均3%、新事業進出・ものづくり補助金は1人当たり年平均3.5%が要件になります。事業承継促進枠は賃上げをするかどうかを選べ、実施すれば上限が1,000万円に上がりますが、800万円の枠に抑えることをお勧めしています。未達だったときの返還と、その後の他の補助金への影響が割に合わないためです。
5. 承継は5年以内に完了すればよい仕組みです
承継そのものは、採択された年に終わらせる必要はありません。第16次公募では、2031年11月5日までに完了すればよいことになっています。ただし猶予があることと先送りしてよいことは別で、期間内に完了できなければ交付決定の取消や返還の対象になり得ます。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 情報開示 | 2026年9月4日 |
| 申請受付 | 2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00 |
| 事業承継の完了期限 | 2031年11月5日(申請期日から5年後) |
公募はおおむね3か月に1回のペースで行われています。
6. 必要書類をそろえるところから始めます
申請は、計画書からではなく必要書類をそろえるところから始めます。これは持続化補助金でも事業継続力強化計画でも同じで、開業届、決算書、登記簿謄本、見積書や価格のわかる書類を先に集めるところからになります。
事業承継・M&A補助金で違うのは、類型によって求められる書類が変わる点です。住民票や株主の状況を示す資料等承継の関係を証明する書類が必要になり、1点でも欠けると内容を見てもらう前に落ちますので、どの類型で申請するかを先に決めておく必要があります。
書類が揃ったら、経営力向上計画・事業継続力強化計画・事業承継引継ぎ支援センターの承継計画書といった加点を取りにいきます。計画書を書くのは、そのあとで構いません。
計画書で持続化補助金といちばん違うのは、地域への貢献を書く欄があることです。雇用を守ることや地域の賑わいを保つことを、自社の言葉で書いておく必要があると考えています。
電子申請はJグランツのみで、GビズIDプライムが必要になります。マイナンバーカードとスマートフォンがあれば最短で即日発行できますが、郵送での取得は日数がかかりますので早めに動いてください。
7. 交付決定の前に発注しない点は同じです
交付決定の前に発注や契約をすると対象外になる点、そして精算払いである点は、持続化補助金と同じです。先に全額を支払い、実績報告と確定検査を経てから入金されます。
8. 補助金の前に使える制度があります
補助金に飛びつく前に使える制度もあります。バリューアップ支援事業では、認定経営革新等支援機関と一緒に経営計画を作る費用の3分の2を国が負担します。窓口は中小企業活性化協議会で、承継の前に自社や相手先の数字を把握する事業デューデリジェンスの費用にも使えます。
9. まとめ
- 代替わりの予定があり、投資額が100万円を超え、建物の改修を含むなら、持続化補助金より事業承継・M&A補助金が合います
- 建物の改修・店舗の改築が対象になる点と、賃上げの要件がない点が、いちばん大きい違いです
- 先に類型を決めて書類を揃え、加点を取り、計画書は最後に書きます
- 第16次公募の受付は2026年10月2日から11月6日17:00までです
制度の数値は公募回により変わります。申請の前に、必ず最新の公募要領でご確認ください。
